日本LCA学会誌
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研究論文
技術導入による社会経済的影響の評価:種子島地域エネルギーシステムにおける産業連関分析の例
尾下 優子兵法 彩大内田 弘太朗兼松 祐一郎福島 康裕菊池 康紀
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2019 年 15 巻 4 号 p. 360-376

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抄録

技術や政策の実施による地域の社会経済効果を産業連関モデルを用いて分析する場合、地域固有の産業構造をよりよく表すためには、地域の産業連関表が必要である。一方で、完全な地域産業連関表の作成には多大なコストが必要なため、様々な仮定のもと代替的な手法が検討されるべきである。本研究では、種子島地域における分散型エネルギー技術の導入による社会経済的効果をケーススタディとして、以下の 3 つの産業連関表の違いによる結果の相違について分析を行う。分析に用いる産業連関表は、地域の産業連関表(ケース I、種子島地域、基準値)、県の産業連関表(ケース II、鹿児島県)、県の産業連関表に一部の地域部門を拡張したハイブリッド型の産業連関表(ケース III)である。分析の結果、技術導入による域内生産額の増加は、ケース I に比べてケース II では27.2% の過少評価となり、この差は、主に分散型エネルギー部門に燃料資源を供給する部門の投入構造の違いによって生じることが明らかになった。そのため、これらの部門の投入構造を地域産業連関表の値に改善したケース IIIでは、ケース I に対する域内生産額の差は +7.4% まで縮小した。これらの結果は、分散型エネルギーシステムの導入による社会経済効果の分析において、資源供給を行う地域部門を都道府県産業連関表に拡張したハイブリット型の手法が、完全な地域産業連関表の作成の多大なコストを抑えつつも、地域の意思決定者に対して有益な予測情報が提供可能なことを示唆している。

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© 2019 日本LCA学会
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