2020 年 16 巻 2 号 p. 86-93
木材は、持続的な森林管理のもとで再生可能な資源であり、持続可能な社会へ向けた有効活用が期待されている。かつて日本や世界の各地で土木構造物へ木材が利用されてきたが、経済発展に伴い、日本の主要な資材はコンクリートや鋼に置き換えられてきた。しかし、近年、気候変動問題への対応、伐採適齢期を迎えた国内人工林の利用や林業振興、持続可能な建設産業などの観点から、土木構造物への木材利用が再び注目されている。木材利用の環境影響あるいは環境影響削減の大きさを定量的に把握するためには、ライフサイクルアセスメント(LCA)が必要となる。しかし、土木構造物への木材利用を対象とした LCA 研究事例は少ない。本解説では、代表的な木製土木構造物による温室効果ガス(GHG)排出削減に着目した LCA 事例を概説するとともに、将来の日本全体における土木分野への木材利用拡大の可能性とそのライフサイクルでの GHG 排出削減ポテンシャルを議論し、今後の研究課題や展望を検討する。