2022 年 18 巻 1 号 p. 3-10
エネルギーシステムの脱炭素化のためにバイオエネルギーに期待される役割を概観した上で、温室効果ガス(GHG)削減効果を評価する LCA 手法の基本的な枠組みと論点を整理した。EU、米国、日本のそれぞれにおいて、LCA で計算された GHG 削減の閾値を含む基準を開発することで、液体バイオ燃料とバイオマス発電・熱利用の持続可能性を確保する制度を構築している。これらの LCA 計算では、カーボンニュートラルの概念に基づき、バイオマス由来の CO2 は計算上ゼロとされてきたが、特に森林バイオマスについて、自然の生態系に再吸収されるまでの時間が問題視され、気候変動対策としてのバイオエネルギー利用の意義が問われている。一方で、バイオエネルギーは、他の脱炭素オプションに先駆けて、GHG 削減効果の確認も含めた持続可能性確認の枠組みの形成に先鞭をつけたと評価できる。こうした経験を踏まえ、政策立案・運用への LCA 活用についての知見を整理していくことが重要である。