2022 年 18 巻 3 号 p. 130-134
陸域での開発行為は、その場所のみならず、河川を通じて沿岸域の生物多様性への影響をもたらす。1972 年の沖縄の日本復帰後、大規模な土地改良事業により、農地からの土砂流出が大幅に増加し、サンゴ礁生態系の劣化を引き起こした。沖縄県等の努力により流出量は減少しているが、現在も農地からの流出は継続している。現在、赤土流出は主にサトウキビ畑とパイナップル畑から起こっており、地域経済も考慮して地域と密着した対策立案が必要とされる。そのためには、サンゴ等の生物分布調査に基づく赤土流出削減目標の設定、赤土流出源となっている農地の抽出、そして流出防止対策の費用対効果の算出という一連の仕組みを構築することが重要で、生態学、土木工学、環境経済学等さまざまな学問分野を統合するアプローチが必要である。