魚類などの水産物は消費者に届くまで、冷蔵あるいは冷凍温度帯により輸送されるが、消費時においては魚肉を解凍する必要があり、魚肉の温度が上昇することで氷結晶の粗大化や酵素反応等により著しく鮮度低下が発生する可能性がある。一般家庭での消費を想定した場合、家庭内での一般的な解凍方法の候補として、電子レンジ、常温解凍、冷蔵解凍、浸水解凍、あるいは流水解凍が挙げられる。これらの解凍方法においては、環境負荷に影響を与える直接・間接のエネルギー投入が行われるため、それぞれの解凍時にかかる環境負荷が異なり、品質と環境影響との相互関係があることが想定される。そこで本研究では、冷凍サバにおける 5 つの解凍方法について、電気インピーダンス測定による魚肉の鮮度評価と LCA に基づく環境負荷を合わせた複合評価を行った。環境影響評価では、GWP(GHG 排出量)を評価指標として、機能単位(FU)をサバの切り身約 1 個分の可食部の 60 g を解凍するまでとして評価を行った。この結果、鮮度の観点からは、温度を低く保ったまま時間をかけて解凍することにより品質が保たれることが示唆された。この理由は、低温であるほど解凍中の細胞の破壊を緩やかにし、肉質の劣化を遅くすることが可能なためである。本研究では、電圧 50 mV、100 kHz ~ 10 Hz の周波数帯でインピーダンス計測を行った。100 Hz の結果から、流水解凍時のインピーダンスが最も小さく 40.8 Ω であった。一方で、インピーダンスが一番大きい解凍方法は冷蔵解凍で 69.0 Ω となり、劣化が進みにくいという結果を得た。また、解凍時間及び直接・間接エネルギー投入量を考慮した環境負荷は、流水解凍が 14.2 g-CO2 eq./FU と最も大きい結果が得られた。これは、水消費による間接的なエネルギー消費量が大きいことによる。その他の解凍方法では、冷蔵解凍が0.124 g-CO2 eq./FU、浸水解凍が 0.196 g-CO2 eq./FU、及び電子レンジ解凍が 0.005 g-CO2 eq./FU となった。最後に、電子レンジによる解凍をベースケースとして、サバの環境影響と鮮度を複合的に評価したところ、鮮度維持の観点からは常温解凍より冷蔵解凍の方が望ましいことが示唆された。