抄録
症例は71歳女性.59歳時に血糖500 mg/dlと,初めて高血糖を指摘され経口糖尿病薬を開始される.61歳時よりインスリン治療をうける.その後,尿中C-ペプチド5 μg/dayと低下を認め,HbA1c8-9 %で経過していた.70歳時,左上下肢の脱力,歩行時ふらつき,構音障害を認め入院.頭部MRIにて基底核にT1高信号域を認めた.血糖コントロールにより,上下肢の不全麻痺は軽快し,MRI異常所見も消失したが,小脳失調症状は改善しなかった.血清抗GAD抗体37000 U/ml,髄液抗GAD抗体1700 U/mlと高値を認めた.最近,抗GAD抗体が原因と考えられる小脳失調症の報告が散見され,その多くが糖尿病を合併している.本症例も抗GAD抗体が原因の小脳失調症と考えられた.小脳失調発症時,血糖コントロールが不良である例も多く,血糖高値との関連も疑われた.