2024 年 20 巻 3 号 p. 173-179
本解説では、民間企業である「佐川急便株式会社(以下、佐川急便)」が実施する環境教育の事例について報告する。佐川急便が展開する宅配便事業から排出される温室効果ガス(以下、CO2)は、サプライチェーン全体(Scope1 + Scope2 + Scope3)で 170 万トンを超える。その環境負荷を低減するために同社では、車両などの輸送インフラを環境負荷の低いものへと移行させていくハード面の対策とともに、従業員の環境保全への意識や行動を促すソフト面の対策となる環境教育とを両輪として 1990 年代から活動を継続している。事業活動で排出されるサプライチェーン全体の CO2 を見ると、間接排出量であるスコープ 3 の排出量が約 80%を占めており、その大半は宅配便の委託輸送である。そこで同社では、サプライチェーン全体の環境負荷低減に向けた取り組みとして、委託輸送のサプライヤーに向けた教育活動もスタートさせている。教育の対象は事業の関係者だけではなく、地域住民や学校などの一般の方々へのステークホルダー・エンゲージメントとして、出前授業や市民会議、森林体験の提供などといったさまざまな活動も展開している。2050 年カーボンニュートラルの実現、ネイチャーポジティブや持続可能な社会の構築を目指す中で佐川急便が行っている環境教育の事例について紹介する。