2025 年 21 巻 3 号 p. 150-158
本論文では、持続可能社会に向けたシステム転換を支援するためのシナリオ設計方法論について論じる。カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーの実現のためには、製品ライフサイクルの漸進的な改善にとどまらず、社会経済システム全体の変革が必要である。システム転換を引き起こすためには、望ましい将来像を描き、その実現経路を逆算するバックキャスティング型シナリオ作成手法がよく用いられる。シナリオ設計は、現状のシステムにとらわれずに様々な起こりうるシステムをシナリオとして記述することで思考実験ができる点に特色がある。一方で、LCAを含むライフサイクル評価は、シナリオで描いた将来システムの妥当性検証のために有効である。シナリオ設計とライフサイクル評価を組み合わせることで、設計案の実現可能性や影響の事前評価が可能となることから、意思決定支援の効果的なアプローチである。ただし、評価の優先順位はその精度というよりも、むしろ目標達成のための条件あるいはボトルネックを把握することにある。LCAコミュニティにおける今後の研究課題として、将来シナリオのさらなる妥当性検証に向けた様々なモデル化手法・評価手法の組合せと、社会実装に向けてシナリオ設計や評価のプロセスを通したステークホルダーとの連携があげられる。