建築分野は、建築物のライフサイクルを通して生じる環境負荷が大きく、その環境負荷削減に大きな責任を負っている。低環境負荷な建築物の実現のためには、多様な環境負荷物質を総合的かつ定量的に評価できるLCAの実施が不可欠である。しかし、建築物のLCAは部品数や評価範囲が広く、評価作業に多大な労力がかかる。このことから、過去に建築された建物の評価を行い、それを用いて設計初期段階で活用可能な知見を得ることや、設計時に役立つ環境負荷低減の視点をまとめることなどは重要と考える。 本記事では、複数の建物を分析した事例をもとに傾向等を考察した国内外の研究事例を紹介した。また、筆者らが実施した117件の建築物のエンボディッド(躯体・仕上げ材(設備は除く))を対象に、マルチクライテリアの視点で建築物に起因する環境影響分析を実施し、その分析結果をもとに支配的要因を明らかにして、削減策を検討した事例について述べた。具体的に、用途別、材料別、プロセス別に、ISO21930で開示が要求されている項目や、日本版被害算定型影響評価手法(LIME)による被害評価や統合化の視点で分析した結果をもとに、削減策の提案について考察した内容を解説した。