2022 年 4 巻 p. 80-93
ペプチド及びタンパク質の固体に対する吸着は、溶液中の有機溶媒によって惹起される高次構造変化に伴うものであり、或る特定の有機溶媒含量(臨界値)を境に急激且つ可逆的に変化(相転移)する事が見出された。これらの知見に基づくと、ペプチド及びタンパク質は、カラム充塡剤に対する吸着能を可逆的に変化させ、カラム充塡剤に対する吸脱離を繰り返しながら、最終的に臨界値を示す溶離液によってカラムから溶出されると考えられた。一方、この吸着能の可逆性を利用したペプチド吸着制御LC が開発された。このペプチド吸着制御LC は、取り扱い時のペプチド及びタンパク質の容器等への吸着回避を目的として、高有機溶媒含量の溶液をLC 装置に導入した場合に問題となるカラム非保持ピークの発生を抑制する事が出来、非保持ピーク発生によって生じる測定精度の損失を回避する事が可能である。加えて、ペプチド吸着制御LC に対する試料導入量は理論上無制限である事から、試料の大量導入による精度の高い高感度定量も可能である。