蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
Triphaenopsis jezoensis, a distinct species : Lepidoptera, Noctuidae, Amphipyrinae
杉 繁郎
著者情報
ジャーナル フリー

1962 年 13 巻 2 号 p. 43-46

詳細
抄録

松村博士は1926年にTriphaenopsis lucilla BUTLERシラホシキシタヨトウの4つの型に新名を与えたが,その中の1つが後に大図鑑(1931)に図示されただけであった.私が以前に北海道大学昆虫学教室にあるこれらの模式標木をみたとき,その中の2つ,ab. putealisとab. nikkonisとはうたがいなく別の種T. postflava LEECHナカジロキシタヨトウのあやまりであることに気付き,そのように私達の総目録を訂正した.残りの2つは今日までそのままとなっていたが,最近私は再度北大の模式標本を調ペてその写真をとり,また朝比奈英三博士の御好意で若干の札幌産の標本を調ペた結果,これは互に同種であって,しかも既知の3種とは全く別の独立種であることが判った.従ってここに松村博士のjezoensisを新種として昇格させ,これをエゾキシタヨトウ(新称)と名付けることにしたい.個体変化の多いこの属では,少数の標本で的確な区別点を指適しにくいが jezoensisの♂は小型でややpostflavaと似ており,後翅の黄色帯の形状がもっとも安定した区別点となるものと思われる.雄交尾器形態は属全体としてよくまとまっているが,明白な差異がある.私は朝比奈博士が,Jezoensisの♂と同日に同所で採集された大型の3♀♀も調ペた結果,一応これらがjezoensisの♀と考えられる点もあったが,雌交尾器にcinerescensとの明白なちがいをみとめられなかったので,今回は保留しておきたい.種jezoensisの産地は現在のところ札幌付近に限られ,8月下旬から9月下旬にかけて出現するようである.北海道からのlucillaの記録は以上の処理によって一先ず抹消しなくてはならない.私はさきに対馬産のT. oberthuri STAU-DINGERツシマキシタヨトウを記録したので(本誌,12:45,1962),日木産のこの属は計5種となった.

著者関連情報
© 1962 日本鱗翅学会
前の記事 次の記事
feedback
Top