抄録
祖師ケ谷および中伊豆系マイマイガの幼虫を,実験室の環境条件下で,バラとカキの葉をあたえて個体別に飼育し,頭蓋の脱皮殻の数から幼虫期における脱皮回数をきめ,頭蓋の幅を測定して令期間における成長様式を考察した. 1.祖師ケ谷系マイマイガは,その幼虫期に雌は6,または5回,雄は5回の,中伊豆系のそれは雌6または5回,雄5あるいは4回の脱皮をくりかえした. 2.頭幅と令期の関係は, DYARの1次式,あるいはGAINES and CAMPBELLの2次式よりもさらに高次の式をあてはめた方が,より高い適合性のえられる場合が多かった. 3.系統,雌雄,脱皮回数について,そのひとつをとりあげて他のふたつを同じにしたとき,祖師ケ谷系の幼虫は中伊豆のそれにくらべて大きく,雌は雄よりも,6回脱皮個体は5回脱皮個体よりも大型であった. 4.幼虫期間については,祖師ケ谷系が中伊豆のそれにくらべ,雌は雄よりも,6回脱皮個体は5回脱皮個体よりも長く,頭幅と同じ関係をしめしたが,蛹の期間については,雌雄の関係が逆で,雌の蛹期間は雄のそれより両系統とも短かかった. 5.頭幅による令期の決定は,3令までは可能であるが,それ以後は頭幅の頻度分布が重複し,頭蓋の脱皮殻は,令期間判定の材料にはなりえない.しかしその前後の推定をおこなう目的であれば,頭幅によることも系統別には不可能ではない.