蝶と蛾
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東南アジア産シジミチョウ雑記(I)
高波 雄介
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1990 年 41 巻 2 号 p. 67-77

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抄録

東南アジア島嶼部産シジミチョウの1新種4新亜種の記載,1置換名1新位置の提起,および3種の新分布地を記録した.Allotinus subviolaceus hitamus ssp. n.はインドネシアのビリトソ島産で,他の亜種に比べ♂前翅表面の灰青色部は著しく縮小し,裏面地色は♂♀とも暗い.Allotinus kudaratus sp. n.はミンダナオ島アポ山産で,♂の表面はA.strigatus,裏面はA.nigritus,A.punctatusに似るが,裏面地色が白く,♂交尾器uncusは相対的に短い.Lycaenopsis haraldus mayaangelae ssp. n.はビリトン島産で,♂♀とも前後翅表面の黒縁が他の亜種に比べ幅広く,清楚で美しい.Jamides pura babinus ssp. n.はシメルーエ島の南東の小島バビ島産で,♂はシメルーエの亜種julianaに似るが,裏面地色は暗く白条も細い.Jamides alsietus camarines ssp. n.はルソン島産で,表面は原名亜種に似るが,♂♀とも前翅裏面第6室外中央部の2本の白条が第4〜5室の白条の並びから大きく翅基部の方向にずれ,♂交尾器valvae後端部の小突起を欠く.また,Jamides rothschildiの原著を(H.HAYASHI,[1977])と判断した.Nacaduba kurava menyangka ssp. n.はスラウェン産で,前後翅裏面亜外縁部に目立った黒斑列を現し,スンダランドと小スンダ列島の亜種との中間的な特徴を持つ.Nacaduba beroe hayashii nom. n.は,スラウェン産のNacaduba ruficirca eliotiがNacaduba sanaya eliotiの新参一次ホモニムであるため,その置換名として提起された.Nacaduba russelliはこれまでマレー半島とシンガポールからのみ知られていたが,新たに北ボルネオ・サバ州から発見された.Nacaduba glauconiaはこれまでマレー半島の山地帯のみに知られていたが,新たにスマトラ沖のニアス島,バビ島から発見された.Nacaduba glauconiaはこれまでジャワ島のみから知られていたが,新たに南スマトラから発見された.Prosotas maputiはこれまでNacaduba bereniceのミンダナオ島産亜種とされていたもので,模式標本を検した結果,その所属,位置が変更された.

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© 1990 日本鱗翅学会
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