蝶と蛾
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Aletia radiata(BREMER)とその近縁種(2新種を含む)について
吉松 慎一
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1990 年 41 巻 2 号 p. 113-128

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抄録

Aletia radiata(BREMER)とその近縁種の整理を行った.これまでこのグループには4つの学名が適用されてきた.Leucania radiata BREMER,1861,Leucania abdominalis MOORE,1881,Leucania moorei SWINHOE,1902,Borolia stellata HAMPSON,1905である.SWINHOE(1902)はオーストラリアからのNonagria abdominalis WALKER,1856をLeucaniaに含めるべきだと考え,Leucania abdominalis MOORE,1881に対しLeucania mooreiの名を提唱した.これら2種は,現在別属とされているが命名規約によるとmoorei SWINHOEが有効となる(条項59b).なお,CALORA(1966)はフィリピン産に対してAletia abdominalis MOOREを適用している.Borolia stellataは日本から記載されたが,井上・杉(1958),杉(1982)はAletia radiata stellataとして扱っている.KONONENKO博士より送られたradiataのタイプローカリティ(ウスリー)からの雄標本とstellataのタイプ標本の交尾器等を詳しく比較した結果,stellataをradiataのシノニムとして扱うべきだと考えた.L.abdominalis MOOREはベンガルからの雌(大英博物館所蔵)に基づいて記載されたが,LEECH(1900),HOLLOWAY(1989)によるとradiataのシノニムとして扱われた.しかし,タイプローカリティからのmooreiとradiataの雄交尾器を比較することによりmooreiは確かな種であることが判った.本論文ではA.radiata,A.mooreiの再記載とフィリピンからの2新種(A.honeyi sp. nov., A.intermediata sp. nov.)の記載を行った.またA.radiataとA.mooreiの分布を示した.A.intermediata sp.nov.とA.mooreiは雄交尾器のcoronal spineの教がかなり減少しており,従来のようにcoronal spineの有無をキョトウ類(Leucania-complex)の属を分ける際の基準の1つと考えることは妥当ではないかも知れないことを示唆した.

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© 1990 日本鱗翅学会
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