蝶と蛾
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ギンツバメの幼生期の形態と習性並びにそれらとフタオガ科に対する類似性
中村 正直吉安 裕
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1992 年 43 巻 3 号 p. 211-216

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抄録

ギンツバメAcropteris iphiata (Guenee)の幼虫と蛹の形態並びに習性について記載した.本種の幼虫はガガイモの葉を食するが,この植物が出す乳液を避けるためか,写真にみられる如く葉を分脈の間でほぼ円形に截り取る特異な喰べ方をする.最近,Minet (1983)は主として雄,雌成虫の鼓膜器官の特異な位置や形態の比較検討から,ギンツバメの属するツバメガ科Uraniidaeにフタオガ科Epiplemidaeを合一させた.この両科の幼生期の形態について比較した結果,幼虫では各胸節共V1を欠き,第1,2腹節のD2がD1に近接し,各腹節のL1が気門の腹方に位置し,SL2を有するなど,蛹では,同一の特異な刺毛式を示す他,下唇髪や小服鬚が現れず,前脚の基部が上唇の位置より頭方から認められ,後翅が腹中部で小さく現れ,また類似した構造の繭を造るなど多くの共通の形質を示すことが判明した.従ってMinetの取り扱いは幼生期の形態上からみても妥当なものと考えた.これらの形質の幾つかはまたシャクガ科の幼生期とも共通したものである.

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© 1992 日本鱗翅学会
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