蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
スラウェシ島産シジミチョウの3新種
高波 雄介
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1994 年 45 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

Hypolycaena sohmai sp. n. (Figs 1-2,♂ genitalia fig.9)♂表面は,フィリピン・ミンダナオ島などに産するHypolycaena shirozui(H. Hayashi, 1981)に似た光沢を持つ美しい青色だが,輝きはほとんど紫色を帯びない.また裏面は同じくスラウェシ島に産するHypolycaena umbrata Seki & Takanami, 1988に似るが,地色は白味が強く,前後翅ともに,中室中央部に他種には見られない橙色条を現す.今のところスラウェシ島中部Tana Toraja地方で得られた1♂のみが知られる. Jamides tsukadai sp. n.(Figs 3-4,♂genitalia fig.10)♂表面は一見してそれと判る特異な種で,幅広い黒縁は同地方に産するJamides celeno kalawarus (Ribbe, 1926)に似る.裏面はいわゆるスラウェシ顔で亜外縁部の白条間が目立って黒くなり,丸い翅形がJamides philatus philatus (Snellen, 1878)を思わせる.しかし白条などの斑紋はJamides snelleni (Rober, [1886])やJamides cyta zelea (Fruhstorfer, 1916)に似ている.特に前翅前縁部の1対の白条は,前翅第9,10室に加え第11室内にも微かながらも現れる.♂交尾器, valvaeはcelenoのそれを引き伸ばしたような形だが, phallusにはcelenoに見られるような末端部腹面の細長い突起を欠く.スラウェシ島中部から少数の♂が得られている. Jamides halus sp. n. (Figs 5-8, ♂genitalia fig.11)♂表面はフィリピンのJamides callistus (Rober, [1886])に似るが,淡い空色の色調はやや鈍くいくらか藤色を帯び,外縁,亜外縁の黒色部はやや発達する.♂裏面の斑紋は同じスラウェシ産のJamides pseudosias echeilea (Fruhstorfer, 1916)に似るが,地色は全体にやや黄ばみ,前翅中央部の白条は中室端の白条と一列につながらない.♂交尾器はJamides alecto latimargus (Snellen, 1878)などに似るが, vinculumは強く曲がり, valvaeも波状に歪む.♀表面も前述3種のものに似るが,前翅黒縁は幅広く,後翅では亜外縁部の白条を除きほとんど灰褐色となる.スラウェシ島中部,南西部から得られている.

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© 1994 日本鱗翅学会
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