蝶と蛾
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フタスジコスカシバSynanthedon pseudoscoliaeforme Spatenka and Arita,1992(鱗翅目,スカシバガ科)の新資料
Oleg G. GORBUNOV有田 豊
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1996 年 47 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

フタスジコスカシバSynanthedon pseudoscoliaeforme Spatenka and Arita,1992は京都府の宝ヶ池で1957年5月10日に得られた不完全な♀で記載された.その後,1991年7月21日に岐阜県上宝村安房平(1,600m)で1♀が矢崎克己氏(八王子)によって得られた.さらに1995年に入って川原進氏(北海道小清水町)によってケヤマハンノキAlnus hirsuta(ハンノキ科)より1995年1月1日と4日に羽化した2♂1♀が同定のため送られてきた.これらはフタスジコスカシバであった.また,ヒトスジコスカシバS.multitarsus Spatenka and Arita,1992の調査で愛知県足助町月原で得たカワラハンノキAlnus serrulatoidesの細い幹よりフタスジコスカシバの2♂1♀が3月6日と4月16日に羽化した.愛知県足助町のカワラハンノキからはヒトスジコスカシバと共に羽化した.北海道の羽化個体は12月9日に終齢幼虫を得てすぐに室内で飼育し,それが1月1日と4日に羽化したものである.愛知県の個体は3月6日に終齢幼虫を得てすぐに室内にうつし,3月28-29日に羽化したものと,4月16日に採集(おそらく蛹)したものが4月20日に羽化したものである.これらはいずれもヒトスジコスカシバのように越冬後春に糞を外に出しておらず,また早く成虫が羽化することからおそらく越冬した幼虫は春に摂食せずにすぐに蛹化するものと推定される.外に出された糞のサインがないために幼虫の加害している幹の発見は非常に困難である.原記載に用いた個体は不完全な♀個体であったので,雌雄のゲニタリアを含め再記載した.

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© 1996 日本鱗翅学会
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