1997 年 48 巻 4 号 p. 264-270
日本国内では,5,000種を越える蛾の採集記録があり,山口県内でも,その1/3に当たる1,700種の蛾の採集報告がある.これら蛾類の個体数と種類数が,山口県中部の山間地域で季節的にどのように変化するか,また個体数と種数の占める割合が大きいヤガ科Noctuidae,シャクガ科Geometridaeおよびメイガ科(広義)Pyralidae(s.l.)の個体数と種数の全体に占める割合が,季節的にどのように変化するのかを検討した.その結果,ライトトラップで採集される蛾類の個体数は6月と9月にピークを持つ双峰的な変化を示し,その構成種類数もそれと似た変化を示すと推定された.また,ヤガ科Noctuidaeの個体数(または種類数)が占める割合は,季節的に殆ど変化しないが,シャクガ科Geometridaeとメイガ科Pyralidaeの個体数(または種類数)の割合は季節によって大きく異なり,シャクガ科Geometridaeは夏と秋にその占める割合が高く,メイガ科Pyralidaeは夏に占める割合が高くなるという対照的なものであった.これら野外調査で観察された蛾類の個体数と種類数および割合の変化は,野外における蛾類の個体群の変化を反映したものであると推察された.