蝶と蛾
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Lopharcha属(鱗翅目,ハマキガ科,マダラハマキガ亜科,Polyorthini族)の幼生期と日本からの新種記載および属の固有新形質
那須 義次
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2008 年 59 巻 4 号 p. 267-276

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抄録

日本産Lopharcha属2種の幼生期を記載した.これら2種の幼虫は,ハマキガ科のなかでは非常にユニークな形をした尾叉をもつことが判明した.2種の尾叉はいずれも三角形で表面に微小な刺を,外縁にやや長めの刺をもつ.同様な尾叉はニュージーランドに分有する同属のL. insolita (Dugdale)に見られるだけである.幼生期が明らかな本属の3種がともに特徴的な是叉をもつことから,この形質は本属の固有新形質であると考えられた. スジケマダラハマキ Lopharcha psathyra Diakonoff 成虫は4月下旬から6月中旬,7月中旬から9月まで採集されているので,おそらく年2化と思われる.11月にシロダモの実に潜っている幼虫を得た.分布:本州,四国,九州. ヤブニッケイマダラハマキ(新称) Lopharcha kinokuniana Nasu, sp. nov. 前翅開張11-15mm.前翅は黒褐色で,隆起鱗粉の束をもつ.外部表徴は前種に類似するが,本種の前翅は前縁に半円形の褐色リングをもつこと(前種は基部1/2に明瞭な2黒褐色横線を有する)で区別できる.♂♀交尾器による識別は容易である.幼虫はヤブニッケイの葉を中肋から内側に二つに折り曲げ刃状のケースを造り,中に潜んで葉裏の表面を摂食する.分布:本州(和歌山県).

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© 2008 日本鱗翅学会
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