ツマグロキチョウEurema laeta bethesebaの腹側翅に太陽光,254nmおよび532nmの波長の光を室温で照射したときの翅の色彩変化について検討した.雌雄のツマグロキチョウの翅の反射スペクトルおよびフォトルミネッセンススペクトルを測定し,雌雄での翅の色彩変化の違いについても検討した.腹側翅は,太陽光と254nmの光照射により次第に黄色から黄褐色に色彩が変化した.一方,暗所に保存した翅や532nmの光を照射した翅には色彩の変化が見られなかった.翅の反射スペクトルにおいて,太陽光照射後の反射率は,照射前と比べて,400-500nmの波長領域で大きくなり,500-650nmで小さくなることが分かった.このようなスペクトルの変化は雄の翅の方が雌の翅よりも大きかった.色彩が変化する前後の翅をレーザー顕微鏡により観察したところ,翅の色彩変化は鱗粉の色彩変化に起因していることが分かった.ツマグロキチョウの翅の黄色から黄褐色は,鱗粉に存在している顆粒(ビーズ)中のプテリン系色素によると考えられる.雄の鱗粉には雌の鱗粉に比べ,ビーズが高密度で存在し,このことは,雄の翅の色彩変化が雌よりも大きい要因であると考えられる.室温における腹側翅のフォトルミネッセンススペクトルからプテリン系色素の存在が分かり,太陽光に含まれる紫外線によりプテリン系色素が変質し翅の色彩変化が起こるものと考えられる.