2014 年 65 巻 3 号 p. 94-100
中国雲南省北部山岳地帯(標高3,100m)で5月に発生する超小型のPieris extensaを精査したところ,それら個体群に共通して翅長や班紋発香鱗等に形態的な特徴が認められる上,四川省産の名義タイプ亜種及びブータンをタイプ産地とするP. extensa bhutyaの生息地とは地理的な隔絶が認められる事から,雲南省Zhongdian地区をタイプ産地としてPieris extensa yunnansia(和名:ウンナンオオスジグロシロチョウ,中国名:大展粉蝶云南〓〓)を亜種記載するものである.また同亜種の記載を通して「Pieris extensaには春型と夏型とがあり,Poujade(1888)が記載したP. extensaは春型,Leech(1891)が記載したP. extensa var. eurydiceは夏型の特徴を備えている」ことも同時に確認する事ができた.なお,この蝶は斑紋及び生息地から判断すると,ssp. extensaとssp. bhutyaとの中間に位置する新亜種(春型)と考えられる.夏型の存在は現時点では確認されていない.ホロタイプ標本は中国広州の華南農業大学に,またパラタイプ標本は東京大学の総合研究博物館に保管する予定.