2016 年 67 巻 1 号 p. 1-6
18 世紀後半に Papilio hylas という学名が 3 種のシジミチョウに与えられたため,2 種については置換名を与える必要が生じた.本論文で扱うのは,そのうちモルッカ諸島のアンボン島をタイプ産地とする Papilio hylas Stoll [1781](現在はルリウラナミシジミ属の Jamides euchylas (Hübner) とされるタクサ)である.
Papilio hylas Stoll の置換名としてPapilio hylassus Herbst, 1800 と Pepliphorus euchylas Hübner, 1819 が提唱されたが,前者は20 世紀初頭以降ほとんど使用されなかった.一方, hylassus Herbst にまったく言及しなかった Fruhstorfer (1916) に従う形で後者が使われることとなった.”The Jamides euchylas complex” を出版したTite (1960) 以降,多くの文献でこのタクサには Jamides euchylas (Hübner) が使用されてきたが,実のところ,忘れ去られた hylassus Herbst はまったく使用されなかった訳ではなかった. Kirby (1871 & 1877) は hylassus Herbst をシノニミックリストにあげており,euchylas Hübner が新参異名であることを認識していた.また,Swinhoe (1916) はモルッカ諸島のセラム島から Jamides gamblea を記載した際に hylassus Herbst と比較を行っていた. さらに,Bridges (1988 & 1994) は hylassus Herbst を”species-group taxon” として掲載していた.
これらのことから,Kirby (1871 & 1877) などの扱いを尊重し,近年 Jamides euchylas (Hübner, 1819) とされていたタクサを Jamides hylassus (Herbst, 1800) (新結合)の新参客観異名とみなし,後者を用いることが推奨される.