2019 年 70 巻 2 号 p. 65-88
ツトガ科の属Conogethesはノメイガ亜科に属し,インドから東南アジア,東アジア,オーストラリアにかけて分布し, 現在世界から14 種が知られている.本属には,ドリアンを含む多くの熱帯果樹を加害するモモノゴマダラノメイガC. punctiferalisをはじめ,農林業害虫となる複数の種が知られ,日本でもモモノゴマダラノメイガはモモやクリ等の果実の重要害虫となっている.
タイ王国農務局の昆虫・動物学研究グループには本属の種が多く保管されているが,Dichocrosis属の下に置かれている個体もあり,一部の種を除き未整理であった.そこで,それらの約200個体の標本を再調査するとともに,大阪府立大学に保管されているタイ王国(以下タイと略記)での4回の調査(1981年,1983年,1985年,1987年)で採集された本属の標本を所検し,Shaffer et al. (1997) による属の定義に基づいて検討・整理した.また, 国立科学博物館および京都府立大学に保管されている本属の一部の標本も合わせて比較・所検した. その結果,タイには1新種を含む以下の7種が分布することを明らかにし,それらの種の形態に基づく検索表を作成した.また, これら7種を形態的差異によって次の3種群に分けた:C. punctiferalis species-group (C. punctiferalis, C. parvipunctalis, C. pinicolalis, C. pluto), C. evaxalis species-group (C. evaxalis) and C. haemactalis species-group (C. haemactalis and C. tenuialalis sp. nov.).