マクロ・カウンセリング研究
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論文
COVID-19 による閉鎖環境が大学生の精神的健康に及ぼす影響
石田 航古田 穂奈美大塚 秀実實吉 綾子
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2022 年 15 巻 p. 74-84

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抄録
閉鎖環境がヒトの精神・心理に与える影響についての研究は,国際宇宙ステーション(International Space Station;ISS)のスタッフなどを対象に行われ,閉鎖環境が精神的健康に悪影響を与えることが示されてきた。2020年に我々は,COVID-19 により物理的・社会的な閉鎖環境で生活することになった。特に一度目の緊急事態宣言では,全国 的に自宅待機が要請され,閉鎖環境での生活を余儀なくされた。本邦でも主に大学生を対象としたCOVID-19が精神的健康に与える影響などの研究が進められているが,大きな変化があった一度目の緊急事態宣言による自宅という閉鎖環境への対応について,検討した研究は見られない。そこで,本研究では,一度目の緊急事態宣言下である2020年4月7日~5月25日の間と,それ以前の生活にどのような変化が生じたかについて,大学生を対象に探索的にインタビュー調査を実施した。 対象者は大学生13 名(男性3 名・女性10名)であり,平均年齢は20.2 歳(SD=1.18)であった。インタビューは対面あるいはオンラインで実施し,半構造化面接法に則り行った。インタビュー内容は録音し,逐語録を作成した後,KJ法に準じて分析を行った。 その結果,「心と身体の健康の変化」や,「睡眠の変化」,「友人や恋人などの対人関係の変化」,「家族関係の変化」,「食事内容の変化」,「お金の使い方の変化」,「助けになったもの」の7の大カテゴリと41の小カテゴリが作成された。COVID-19 により環境の変化を経験することで,精神的健康だけでなく,睡眠や食事など生理的な部分にまで,ネガティブな変化が生じていた。また,閉鎖環境によって家族と葛藤を抱える語りも見られた。これは,COVID-19の流行による家族成員それぞれの不安が,家族内の境界線を曖昧とし,過保護・過干渉などが生じたためと考えられる。一方で,環境に変化が生じたにも関わらず,生活に変化が生じなかった,あるいは,ポジティブに変化したと語る者もいた。これには,ストレス体験への意味づけが関連していると考えられる。今後は変化に対する意味づけの違いには,どのような要因があるのか検討する必要がある。
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