抄録
本稿は, 計3回の⾯接の後に中断となった学⽣相談事例を通じて,初期治療における介⼊とアセスメントについて考察するものである。クライエントは,対⼈関係における困難を振り返りながら,内的な体験についての洞察を深めていた。⼀⽅,カウンセラーは現実的な問題に焦点を当てることから⾯接を開始し,その後,情緒的な体験に関わる介⼊を試みていた。しかし,カウンセラーは⾯接が順調に進んでいると認識していたにもかかわらず,⾯接は最終的に中断された。クライエントにとって,カウンセラーの期待に沿って内省を進めることは,⺟⼦関係において演じてきた役割そのものだった可能性がある。また,⼗分に信頼関係が構築されていない段階で情緒的な反応を⽰すことは,侵⼊的な体験として感じられたと考えられる。このような侵⼊的な状況を回避しようとする試みが,カウンセラーには認識されなかった可能性がある。以上を踏まえて,⼼理⾯接における内容理解のみならず,カウンセラーとクライエント間の相互的なズレや内省⽔準への応答的調整を含む治療関係上の配慮を⾏うことの臨床的意義について論じた。