哺乳類科学
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原著論文
放牧地の哺乳類相調査への自動撮影装置の応用
塚田 英晴深澤 充小迫 孝実須藤 まどか井村 毅平川 浩文
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2006 年 46 巻 1 号 p. 5-19

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抄録
栃木県内の放牧地において自動撮影および痕跡調査による哺乳類相調査を行い, 両手法の結果を比較した. さらに自動撮影データの特徴を記載し, 本手法のさらなる洗練化を検討した. 確認哺乳類は16種であり (自動撮影:12種, 痕跡調査:14種), 県内で確認されている中大型哺乳類13種のうち9種が含まれていた. 痕跡調査では, 夏と秋に確認種数が減少したが, このような季節による影響はカメラ調査では確認されなかった. カメラ調査は一年を通じて利用可能と考えられる. 両調査における確認種の一致度は低く (k統計量:0.43, 95%信頼限界:0.29-0.56), 出現頻度指標 (哺乳類の撮影頻度と痕跡発見数) の相関は有意ではあるが高くなかった (r=0.58, p<0.05). 両手法は相補的関係と考えられた. 各放牧地で自動撮影による野生哺乳類確認種数が最大に達するのに平均218.4 (最小:24.4-最大:780.9) カメラ日の調査努力を要したが, 1放牧地当たり1台の自動撮影装置では当該放牧地の最大確認種数を測定する上で十分ではなかった. また, 異なる機種の比較から, 連続撮影防止用の休止機能は生息種確認調査での有効性が示唆された. 自動撮影装置による哺乳類相調査を放牧地で行う際, 2台以上の自動撮影装置をもちいて3ヶ月間調査を継続し, 痕跡調査も補足的に実施することが推奨される.
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© 2006 日本哺乳類学会
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