霧島山地, えびの高原において, ニホンジカに対する餌付けの影響を明らかにする目的で, 観光客による餌付けの定量化を試みた. のべ71時間の観察時間のなかで, シカに何らかの興味を示し接近したのは977団体, 2,733人, このうち183団体, 579人がシカに餌を与えた. 接近した人数と餌付けした人数の間には正の相関がみられ, 接近した人数の約20%が餌を与えていた. 与えた餌のメニューは, スナック・菓子類が70%を占めており, 1団体が平均0.63袋の菓子類を与えていた. 餌付けされたシカのグループサイズは1~11頭で, 平均4.8頭であった.
一日の駐車場利用台数と一日の餌付け人数, 餌付け団体数の間には正の相関がみられた (一日の餌付け人数:
r=0.737,
F=10.7,
p<0.0014, 一日の餌付け団体数:
r=0.737,
F=10.7,
p<0.01). また, 回帰式から, 年間の餌付け人数, 餌付け団体数が23,000人, 7,000団体と推定され, 餌付けがシカにとって一つの餌資源となっていることが明らかになった.
抄録全体を表示