2007 年 47 巻 1 号 p. 73-79
兵庫県におけるニホンジカ (Cervus nippon) 保護管理計画の達成状況と今後の展望について報告する. 2000年度以来, 保護管理計画で定めた捕獲目標 (10,000-15,000頭/年) は達成されているが, 計画の目標とする生息数の半減 (35,000頭から15,000頭に) や農林業被害の低減には至っていない. モニタリング結果を踏まえた対策の強化を行ったことで, シカの密度の増加を抑えることはできたが, 生息数の半減という目標を達成するまでの捕獲圧をかけることはできなかった. 現時点では, 密度指標, 集落ごとの被害状況, 森林植生の状況, 捕獲個体の分析などモニタリングは充実してきた. 今後は, 新たな課題への具体的方策の検討を行うほか, モニタリングデータを県民全般に理解しやすい形で提示し, 適切な合意形成や施策決定に結びつける体系を整える必要がある.