哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
47 巻 , 1 号
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
原著論文
  • 石塚 譲, 川井 裕史, 大谷 新太郎, 石井 亘, 山本 隆彦, 八丈 幸太郎, 片山 敦司, 松下 美郎
    2007 年 47 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    季節や時刻による行動圏の変動をみるために, 成雌ニホンジカ2頭にGPS首輪を用いて, 経時的な位置を調査した. 調査期間は, それぞれ, 392日と372日で, シカの位置は0時から3時間毎に計測した. 2頭の年間行動圏面積はともに森林域と水田周囲とを含む43.7 haおよび16.3 haであり, 行動圏の位置に季節による変動はみられなかった. 個体1の季節別コアエリアは, 四季を通して水田周囲に位置し, 個体2でも夏期以外は水田周囲に位置した. 時刻別コアエリアは, 12時および15時では森林域に, 0時および3時では水田周囲に位置した. 以上の結果から, GPS首輪を装着した2頭の成雌ニホンジカは, 大きな季節移動をせず, 日内では, 森林域 (昼) と水田周囲 (深夜) を行き来していると考えられた. また, 行動圏とコアエリアの位置から農耕地への依存度が高いことが推察された.
  • 田口 美緒子, 吉岡 基, 柏木 正章
    2007 年 47 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    三河湾湾口部におけるスナメリの分布密度の季節変化を明らかにすることを目的として, 2002年8月から2004年9月の海況の良い日に伊良湖―師崎間を航行するカーフェリーに乗船し, ライントランセクト法による目視調査を実施した. 観察者は調査期間中に7,153 kmを調査し, 224群780頭 (うち19組は親仔連れ) のスナメリを発見した.
    三河湾湾口部における分布密度は, 冬季から春季にかけて増加 (0.06-2.22 頭/km2) し, 夏季から秋季にかけて減少 (0-0.22 頭/km2) する傾向を示した. この結果と先行研究との比較から, 伊勢湾・三河湾に生息するスナメリは, 秋季に湾外まで分布域を広げる可能性が考えられた. また, 発見頻度の高い冬季および春季の群れサイズが15時以後に大きくなったことと飼育下のスナメリで報告されている採餌量の日周変化から, 三河湾湾口部は, 冬季から春季におけるスナメリの採餌海域の一部であると考えられた.
短報
  • 中下 留美子, 後藤 光章, 泉山 茂之, 林 秀剛, 楊 宗興
    2007 年 47 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    An adult male Asiatic black bear (Ursus thibetanus), 105 kg in body weight and 130 cm in total length, was captured at a fish farm in Miyadamura village, Nagano Prefecture, Japan in June 2005, due to its nuisance activity. We analyzed δ13C and δ15N in the hairs and plasma of the bear and in the muscles of rainbow trouts (Oncorhynchus mykiss) at the farm to discern whether the bear was actually involved in the farm damages. Both δ13C and δ15N values in the hairs and plasma were similar to those in rainbow trout muscles, confirming that the bear indeed ate a considerable number of the farm's rainbow trouts. The δ13C and δ15N values of serum were closer to those of the trout muscles than those of the hairs, indicating that the bear depended heavily on trouts in the spring of 2005 in comparison with the previous year. Moreover, stable isotope levels in the tips of the hairs were closer to those of trout muscles than those at the bases of the hairs. This suggests that the bear depended much more heavily on trouts in the previous spring than in the previous fall.
報告:特集『シカ特定鳥獣保護管理計画の現状と課題』
  • 宇野 裕之, 横山 真弓, 坂田 宏志, 日本哺乳類学会シカ保護管理検討作業部会  
    2007 年 47 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ特定鳥獣保護管理計画 (2002-2006年度の期間) の現状と課題を明らかにするため, 29都道府県及び大台ケ原地域を対象に2006年6月から9月までの期間, 聞き取り調査を行った. 管理目標は主に 1)個体群の存続と絶滅回避, 2)農林業被害など軋轢の軽減, 3)個体数削減, 及び4)生態系保全に区分できた. 個体数や密度のモニタリング手法には, 1)捕獲報告に基づく捕獲効率や目撃効率, 2)航空機調査, 3)ライトセンサス, 4)区画法, 及び5)糞塊法や糞粒法が用いられていた. 航空機調査, 区画法及び糞粒法を用いた個体数推定では, 多くの事例 (30地域中の11地域) で密度を過小に評価していたことが明らかとなった. 個体数の過小評価や想定外の分布域の拡大によって, 個体数管理の目標が十分達成できていないと考えられる地域も多くみられた. フィードバック管理を進めていく上で, モニタリング結果を科学的に評価し, その結果を施策に反映させるシステムの構築が必要である. そのためには, 研究者と行政担当者の連携が重要である. また, 県境をまたがる個体群の広域的管理と, そのための連携体制を築いていくことが大きな課題だと考えられる.
  • 山内 貴義, 工藤 雅志, 高槻 成紀
    2007 年 47 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    岩手県に生息するニホンジカ (Cervus nippon centralis, 以下シカ) の保護管理を通覧し, 近年発生している問題点を整理して, 新たに取り組むべき課題を論じた. 岩手県に生息するシカは, 本州北限の個体群として知られている. 1980年代までは個体数が減少したために保護策がとられていたが, その後, 個体数が増加して農林業に被害を及ぼすようになったため, 岩手県は1994年から頭数管理を主軸とした対策を進める一方, 1988年から適正管理を目的としてさまざまなモニタリング調査を実施している. 調査項目は「分布調査」, 「生息密度調査」, 「捕獲個体調査」, 「ササ調査」, 「ヘリコプター調査」および「被害実態調査」である. シカ密度の抑制を図った結果, 被害額は県全体で大幅に減少した. しかし近年, 新たな問題点が浮上している. それは最近の数年間でシカの生息域が拡大していることや, 五葉山周辺地域ではおそらくシカの行動が変化し, 「里ジカ」が増加したために農業被害が急増していることなどである. これらの問題を克服するためには, 地域の特性を的確に把握し, 分布拡大の抑制, 里ジカによる農業被害の集中的防除, 調査法の向上などに努める必要がある.
  • 浅田 正彦, 落合 啓二
    2007 年 47 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    千葉県房総半島に生息するニホンジカ (Cervus nippon, 以下, 「シカ」と記す) の個体数推定方法とレスリー行列を用いた確率論的シミュレーションの結果を紹介する. 個体数の変動傾向のモニタリングとして, 糞粒法, 区画法, ライトセンサス, およびCPUEの調査を実施しており, 全個体数推定は, 糞粒法と区画法による推定生息密度の関係から算出している (糞粒-区画法とする) . モニタリングが実施できない地域では, 出生数と捕獲数から推定している (出生数-捕獲数法とする) . 各評価指数の信頼性や精度を直接検討していないが, 糞粒-区画法と出生数-捕獲数法による推定値の間に高い相関がみられ, CPUEと糞粒-区画法の推定値間についても有意な関係にあった. 確率論的シミュレーションによると, 2003年以降に毎年1,000~1,500頭レベルの捕獲を継続していくことによって, 個体数を管理目標案に誘導可能となることが予測された.
  • 矢部 恒晶
    2007 年 47 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    九州におけるニホンジカ特定鳥獣保護管理計画について, 策定している6県の担当者へのアンケートおよび聞き取りを行い, モニタリング手法やこれまでの結果, 評価の体制, 広域的な個体群管理のための協力体制, および推進上の問題点について整理した. 個体群モニタリングには捕獲個体や糞粒法等に基づく指標が利用され, 将来予測や捕獲計画にはいくつかの手法が用いられていた. 2000年度から2006年度までの計画期間においては, 多くの地域で捕獲による生息数の減少割合は小さく, 生息数の現状と最終目標との開きがまだ大きいと考えられた. 計画の推進に当たり, 福岡県では学識経験者で構成される保護管理検討委員会とその他の分野のメンバーで構成される連絡会議が, 他の5県では多分野の委員から構成される保護管理検討委員会が, モニタリングの評価および管理施策の検討を行っていた. 県境を越えて分布するシカ個体群の管理のため, 複数の県や森林管理局等による合同一斉捕獲や, 行政, 試験研究機関等で構成される協議会等における情報交換等の協力体制がつくられてきた. 行政担当者からは, モニタリングの精度, 施策の進行度, 予算の制約等について問題点が指摘された. 今後のモニタリング調査の充実や科学的評価機能の維持, モニタリングデータの共有等が必要と考えられる.
  • 濱崎 伸一郎, 岸本 真弓, 坂田 宏志
    2007 年 47 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    ニホンジカの管理に必要な密度指標として, 区画法と糞塊密度法, および目撃効率の整合性を調べ, モニタリング指標としての妥当性を検証した. これらの調査は, 福井県, 滋賀県, 京都府, 兵庫県, 徳島県などのニホンジカ特定鳥獣管理計画策定前調査および策定後のモニタリングで採用されている. 区画法による面積あたりのカウント数と糞塊密度, および糞塊密度と目撃効率には有意な正の相関があった. これまでのところ, 十分な調査努力をしている地域では, 両指標の年推移も非常によく一致しており, いずれも密度変化の動向を適切に反映していると考えられた. 目撃効率の活用においては, 狩猟者から寄せられる報告数 (出猟人日数) の確保や, 積雪が目撃数におよぼす影響などを明らかにすることが課題である. また, 糞塊密度調査では, 平均気温の差による糞塊消失率の変化などが結果を左右することが懸念される. 精度の高い確実な調査法がない現状では, 複数の指標から密度変化の動向を評価することが重要である.
  • 横山 真弓, 坂田 宏志
    2007 年 47 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    兵庫県におけるニホンジカ (Cervus nippon) 保護管理計画の達成状況と今後の展望について報告する. 2000年度以来, 保護管理計画で定めた捕獲目標 (10,000-15,000頭/年) は達成されているが, 計画の目標とする生息数の半減 (35,000頭から15,000頭に) や農林業被害の低減には至っていない. モニタリング結果を踏まえた対策の強化を行ったことで, シカの密度の増加を抑えることはできたが, 生息数の半減という目標を達成するまでの捕獲圧をかけることはできなかった. 現時点では, 密度指標, 集落ごとの被害状況, 森林植生の状況, 捕獲個体の分析などモニタリングは充実してきた. 今後は, 新たな課題への具体的方策の検討を行うほか, モニタリングデータを県民全般に理解しやすい形で提示し, 適切な合意形成や施策決定に結びつける体系を整える必要がある.
  • 三浦 慎悟
    2007 年 47 巻 1 号 p. 81-83
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    Based on a review of the Specified Wildlife Conservation and Management Plans (SWCMP) for sika deer (Cervus nippon) populations in prefectures that have used them, I raised several points, especially on the significance of the monitoring and feedback system in sika deer population management. Establishment of an appropriate management system is the most important criterion in evaluating the SWCMP. I expect the positive support of the national government in establishing a management system in the prefectures.
  • 梶 光一
    2007 年 47 巻 1 号 p. 85-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/21
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ個体群のモニタリングに用いられているほとんどの相対密度指数間には一貫性が認められているものの, 生息数は多くの地域で過小評価となっている. 個体群管理を開始する際に, 推定生息数を基に捕獲数を決定しなければならないので, センサスの正確度がとりわけ重要となる. 過去の経験に基づいて, モニタリング手法による生息数の過小評価の程度を検討する必要がある. 捕獲数と個体群成長率は既知なので, 強度な捕獲圧をかけて一度個体数を減少させると, 個体数を推定することが可能となる. モニタリング手法の開発, 広域モニタリングおよび交通事故・列車事故などの国家規模でのモニタリングが重要である.
2006年度大会シンポジウム記録1「動物地理学の最近の進展」
2006年度大会シンポジウム記録2「特定鳥獣保護管理計画の現状と課題」
2006年度大会ミニシンポジウム記録「野生哺乳類における感染症・寄生体に着目した保全医学の現状」
2006年度大会自由集会記録
フォーラム
書評
feedback
Top