抄録
担子菌ナガエノスギタケはモグラ類の巣の近傍の排泄所から特異的に生えるので,これを手がかりとしてモグラ類の巣を探知できる.この方法によって滋賀県高島市朽木において調査した巣のうち3例はミズラモグラのものであった.これらの例は,標高770 m,440 m,および260 mにあった.巣の同定は,坑道の径と巣および排泄所に残存する体毛の形態とによっておこなった.さらに,標高260 mの例では,巣を使用中のミズラモグラを捕獲して巣の同定を補完するとともに本種生息の直接証拠とした.滋賀県北西部における本種の存在と,このような低標高地点における本種の営巣・生息が報告されるのは初めてである.