哺乳類科学
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原著論文
頭蓋計測値に基づく個体群関係の分析法について
―クロクビタマリンの地域個体群を題材にして―
名取 真人小林 秀司
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2009 年 49 巻 1 号 p. 25-36

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抄録

頭蓋の計測値に基づいて個体群間の関係を分析する場合,クラスター分析やオーディネーション法が広く用いられる.クラスター分析では,樹形図を描き出すことが主な作業で,その信頼性の検定は基本的に行われない.ただ,樹形図の信頼性の評価はやはり気になる問題である.オーディネーション法は主成分分析や正準判別分析であることが多いが,これらの方法は多様な形態学的距離/類似度のすべてに対応しているわけではない.また,クラスター分析とオーディネーション法では,2つの独立した距離/類似度(たとえば,形態的類似度と地理的距離)の関係に統計的な評価をくだすことができない.そこで,本研究では,このような問題点に対して,次の解決策を紹介した.クラスター分析の評価法には共表形相関係数,ブートストラップ法,最短距離法と最長距離法の合意樹,多様な距離/類似度に適用可能なオーディネーション法には主座標分析と非計測的多次元尺度構成法,そして2つの独立した距離/類似度の関係を検定する方法にはマンテルテストの使用がそれである.さらに,1つの例として,これらの方法をクロクビタマリン(Saguinus nigricollis)の個体群関係を分析するために実際に活用した.

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© 2009 日本哺乳類学会
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