哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
原著論文
盛岡市の都市近郊林に生息するニホンリスの雌雄別行動圏面積および行動圏重複率とオニグルミの資源量との関係
西 千秋出口 善隆青井 俊樹
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 51 巻 2 号 p. 277-285

詳細
抄録
盛岡市高松公園および周辺の森林においてニホンリス(Sciurus lis)の直接観察およびテレメトリー調査を行い,行動圏面積と行動圏重複率を明らかにした.また,行動圏内および重複・非重複行動圏内のオニグルミ(Juglans mandshurica var. sieboldiana,以下クルミ)の資源量を算出し,行動圏とクルミの資源量との関係を明らかにした.
リスの平均行動圏面積はオスでは3.65 ha,メスでは1.45 haであり,平均行動圏重複率はオスでは36.5%,メスでは62.9%であった.本調査地のリスの行動圏面積は,既報における平均的な行動圏面積よりも狭かった.また,メスの行動圏は排他的ではなく,行動圏面積とクルミの本数密度との間に負の相関(P<0.05)があり,さらに,重複行動圏に含まれるクルミの本数密度は,非重複行動圏よりも大きいことが分かった(P<0.01).
これらの結果より,メスの行動圏面積は,クルミの資源量が多いと狭くなり,クルミの資源量の多さが,メスの行動圏の重複につながると考えられた.本研究によってメスのリスの行動圏の確立,並びに行動圏の重複要因の一つにクルミの資源量が大きく関わっていることが示唆された.
著者関連情報
© 2011 日本哺乳類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top