哺乳類科学
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タイリクモモンガ用樹洞トラップの有効性
浅利 裕伸
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2015 年 55 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

これまでのタイリクモモンガ(Pteromys volans)の研究では,個体の捕獲に巣箱が活用されてきたが,本種は厳冬期に巣箱を利用しないため通年の調査が困難であった.そこで,通年にわたって個体データを収集するための効果的な捕獲方法の確立を目的として,新たな樹洞トラップを開発し,タイリクモモンガが使用している樹洞の入り口にこれを設置した.トラップ内にはプラスティック板の返しを装着することにより,一度入ると樹洞に戻ることができない工夫を施した.北海道帯広市の樹林において,2006年1月~2008年4月に38個体の捕獲を試みた結果,33個体を捕獲することに成功した.残りの5個体は同居するグループの一部の個体であり,厳冬期に出巣しなかったために捕獲ができなかった.厳冬期はタイリクモモンガの活動が低下し,活動時間も不規則になることから,樹洞トラップを用いても樹洞内の全個体を捕獲することは困難であると考えられる.しかし,確認された個体の7割以上を捕獲することが可能であり,それ以外の季節では幼獣を含むすべての個体を捕獲することができたため,巣箱を用いた捕獲と比べて定期的な個体データの収集に,より有効な手法であると考えられる.

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© 2015 日本哺乳類学会
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