哺乳類科学
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特集『日本におけるクマ類の保護管理の現状と課題2012-2013』
II.モニタリングによる施策評価の実施状況と課題
小坂井 千夏近藤 麻実有本 勲伊藤 哲治後藤 優介中下 留美子中村 幸子間野 勉
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2015 年 55 巻 2 号 p. 241-263

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抄録
野生動物の順応的管理には,継続して実行できるモニタリング手法を,地域の実情に合わせて選択することが重要である.本稿では,この選択に役立つ基礎資料を作ることを目的に,全国におけるクマ類(ヒグマUrsus arctos及びツキノワグマU. thibetanus)の保護管理に関するモニタリングの実施状況やモニタリング結果の施策等への反映状況,課題について整理した.また,保護管理計画における評価機関の位置付けや,近隣県との広域連携の状況についても整理した.この結果,全国で様々なモニタリングが実施されていたが,施策等の評価に活用できていないモニタリングデータもあり,これは被害管理に関するモニタリング項目に多かった.モニタリング結果を用いて評価を行い,評価結果を次期計画や施策等に反映させる仕組みについては発展段階であると言える.まずは,実施した施策等の達成状況を評価するためのモニタリングを確実に実行していくことが重要である.また,モニタリングデータの収集に際して,予算上,体制上,技術上の様々な課題があることが分かった.研究者は,それぞれのモニタリング項目で挙げられた課題を踏まえた上で,施策等の評価手法までを含めて提案を行い,モニタリング結果の有効活用を技術的にサポートしていく必要がある.
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© 2015 日本哺乳類学会
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