2017 年 57 巻 2 号 p. 349-353
九州北西部(国道3号線以西)では,ムササビの確実な生息記録は近年ほとんどなく,絶滅のおそれがかなり高い.我々は,巣箱と自動撮影カメラを用いた樹上性小型哺乳類の調査により,2015年8月,佐賀県唐津市の八幡岳においてムササビの生息を確認した.これは,生息地が特定できる生体の確認情報としては佐賀県初の記録であり,九州北西部においても1968年以来47年ぶりの記録である.今回の動画では,アライグマが樹幹に登った後に,ムササビが樹上から地面へと落下し,地上を走り去る様子が撮影されていた.アライグマは九州北西部で急速に分布を拡大しており,ムササビを含めた在来種に及ぼす負の影響を今後注視する必要がある.