哺乳類科学
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特集 やんばる国立公園・奄美群島国立公園指定記念:中琉球の哺乳類の生態,行動,保全
  • 山田 文雄
    57 巻 (2017) 2 号 p. 183-194
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    琉球列島のうちの「中琉球」とよばれる地域に,2016年に「やんばる国立公園」が誕生し,2017年に「奄美群島国立公園」が新たに誕生した.これらの国立公園指定の意義は,現在,日本政府が登録申請中の「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地」の保護区としての保護担保措置のためである.中琉球の生物相は特異的で,ユーラシア大陸から古い時期(後期中新世-更新世初期,1,163万年前–200万年前)に分岐し長い孤立期間を経て,捕食性哺乳類を欠いた島嶼環境で独自の進化を示し,高い固有性を示している.遺存固有種のウサギ類やネズミ類が代表としてあげられる.近年,研究成果も多くあり,本誌の特集でも新たな研究成果が追加されている.琉球列島の希少種や生物多様性保全に対して,日本哺乳類学会はこれまで20年以上にわたり要望書や意見書を提出してきている.今後の課題としては,本地域の新たな保護対策や世界自然遺産登録にかかわる,生息地保全や外来生物対策の強化が挙げられる.

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  • 久高 奈津子, 久高 將和
    57 巻 (2017) 2 号 p. 195-202
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    沖縄島北部のやんばる地域において,ケナガネズミDiplothrix legata(齧歯目ネズミ科)の食性を直接観察と食痕調査により明らかにした.餌品目には植物31種と動物10種が含まれた.摂食した植物の部位は種子22種,果実8種,葉3種,樹皮3種とさまざまであったが,ケナガネズミの食性は主に種子や果実に偏った雑食性であることが示された.また植物の生物季節(フェノロジー)の進行とともに摂食する樹種に変化も認められた.なおケナガネズミの繁殖期は,多様な果実・種子が実る時期と一致していた.本種にとって,餌資源の観点で好適な環境は,多様な植物種が時期をずらしながら通年結実する森林であると結論づけられた.

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  • 玉那覇 彰子, 向 真一郎, 吉永 大夢, 半田 瞳, 金城 貴也, 中谷 裕美子, 仲地 学, 金城 道男, 長嶺 隆, 中田 勝士, 山 ...
    57 巻 (2017) 2 号 p. 203-209
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミDiplothrix legataのルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.

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  • 城ヶ原 貴通, 越本 知大
    57 巻 (2017) 2 号 p. 211-215
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    ケナガネズミ(Diplothrix legata)は南西諸島の固有種であり,かつ絶滅が危惧されているが,徳之島における分布・生息状況については,目撃情報やロードキルなどの断片的情報に限られている.我々は徳之島の森林全域において,リュウキュウマツ(Pinus luchuensis)の食痕を指標としたケナガネズミの糞の探索による本種の分布調査を2015年8月に実施した.その結果,ケナガネズミの糞を島北部の天城岳,三方通岳周辺,島中部の井之川岳,美名田山,剥岳周辺ならびに島南西部に位置する犬田布岳周辺において確認した.これらの情報の中には,これまでケナガネズミの分布が報告されていなかった井之川岳南部や犬田布岳西部の分布確認も含まれていた.

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  • 加藤 悟郎, 城ヶ原 貴通, 後藤 嘉輝, 篠原 明男, 越本 知大
    57 巻 (2017) 2 号 p. 217-220
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    ケナガネズミは奄美大島,徳之島ならびに沖縄島北部のみに分布する日本固有の齧歯類である.今回我々は,徳之島において2016年8月に交通事故により死亡した雄のケナガネズミを入手し,その生殖腺の組織学的観察をおこなった.その結果,本個体の精巣では精子形成が認められたものの,精巣上体内の貯留精子は極めて少量であった.したがって,本個体は精巣および精巣上体の形態的な成熟を終え,その後の交尾に向けた繁殖学的機能性を獲得しつつある段階にあったと推察できた.今後,さらに個体数を増やすとともに,完全に性成熟を遂げた個体を用いた検討を継続していきたい.

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  • 中谷 裕美子, 長嶺 隆, 金城 道男, 中田 勝士, 山本 以智人
    57 巻 (2017) 2 号 p. 221-226
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    中琉球に固有のネズミ類であるケナガネズミとオキナワトゲネズミの傷病個体(それぞれ13頭,1頭)を保護して飼育した.複数の人工飼料を主食とし,さまざまな植物質の餌(果実・種子,野菜)や動物質の餌(小動物,鳥類の卵等)を副食として給餌した.ケナガネズミでは最長3.9年間,オキナワトゲネズミでは4.1年間にわたり長期飼育することができた.飼育環境,飼育下でみられた行動,血液生化学検査の値,死亡原因等について得られた知見は,今後の両種の救護だけでなく,生息域外保全の個体群維持にも資するものである.

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  • 安田 雅俊, 関 伸一, 亘 悠哉, 齋藤 和彦, 山田 文雄, 小高 信彦
    57 巻 (2017) 2 号 p. 227-234
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.

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  • 久高 奈津子, 久高 將和
    57 巻 (2017) 2 号 p. 235-239
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    沖縄島北部においてオキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象とした自動撮影カメラによる調査を行ったところ,オキナワトゲネズミは夏期と冬期で日周活動を変化させることが示唆された.すなわち,夏期の調査(6月下旬~9月下旬:日平均気温の旬平均25.3–26.9°C)ではすべて昼間に撮影され(n=12),冬期の調査(1月初旬~3月下旬:日平均気温の旬平均13.8–17.5°C)ではすべて夜間に撮影された(n=13).一方,同所的に生息する外来種クマネズミRattus rattusは時期を問わずすべて夜間に撮影され(夏n=6,冬n=15),クマネズミとオキナワトゲネズミは冬期にのみ日周活動性が一致した.本研究によって,これまでほとんど知られていなかったオキナワトゲネズミの特異な行動の一端があきらかとなった.今後さらに調査を行い,本種のこの特異な行動と本種の個体群衰退との関係性についてさらに検討する必要がある.

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  • 鈴木 真理子, 大海 昌平
    57 巻 (2017) 2 号 p. 241-247
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    イエネコFelis catusによる在来種の捕食は,日本においても特に島嶼部において深刻な問題である.鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する遺存固有種アマミノクロウサギPentalagus furnessiの養育行動を2017年1月から3月にかけて調査していたところ,繁殖穴で離乳間近の幼獣がイエネコに捕獲される動画を自動撮影カメラによって撮影したので報告する.繁殖穴における出産は2017年1月14日~15日の夜に行われたが,幼獣(35日齢)がイエネコに捕獲されたのは2月19日1時ごろで,この前日は繁殖穴を母獣が埋め戻さずに入り口が開いたままになった初めての日であった.この動画の撮影後,幼獣は巣穴に戻っていないことから,捕食あるいは受傷等の原因で死亡した可能性が高い.イエネコは幼獣の捕獲から約30分後,および1日後と4日後に巣穴の前に出現し,一方アマミノクロウサギの母獣は1日後に巣穴を訪問していた.幼獣の捕食は,本種の個体群動態に大きな影響を与えうる.本研究により,アマミノクロウサギに対するイエネコの脅威があらためて明らかとなった.山間部で野生化したイエネコによるアマミノクロウサギ個体群への負の影響を早急に取り除く必要がある.

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  • 平城 達哉, 木元 侑菜, 岩本 千鶴
    57 巻 (2017) 2 号 p. 249-255
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    鹿児島県奄美大島に分布するアマミノクロウサギPentalagus furnessiを対象として,2007年度~2016年度の10年間に環境省奄美野生生物保護センターにおいて把握できている本種の死亡個体と鹿児島県教育委員会大島教育事務所に集約された天然記念物滅失届の情報(n=499)を用いて,ロードキルの発生場所と発生時期を検討した.ロードキル(113件,交通事故で緊急保護された直後に死亡した3個体を含む)は全体の滅失数の22.6%を占めた.このうち,93件(82.3%)は島の中南部(奄美市住用町,大和村,宇検村,瀬戸内町)で発見されたもので,特に瀬戸内町網野子峠,奄美市住用町三太郎峠,県道612号線,県道85号線がロードキル多発区間であった.アマミノクロウサギのロードキル発生時期には季節性がみられ,発生件数は夏に少なく,秋から冬に多い傾向が示された.

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  • 鈴木 真理子, 大海 昌平
    57 巻 (2017) 2 号 p. 257-266
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    養育行動の記録は,親から子への投資や子の発達過程を知るための基礎情報であり,域外保全のためにも重要な情報である.アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)は鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する遺存固有種である.母獣は休息用の巣穴とは別の場所に繁殖用の巣穴を持ち,その中で幼獣を育てる.2015年秋に奄美大島の農地内に掘られた繁殖穴を発見し,2015年9月から2017年5月まで自動撮影カメラにより撮影を行ったところ,2016年4月から5月までと,2016年12月から2017年2月までの2回の繁殖が確認された.アマミノクロウサギの養育行動は,繁殖穴形成,産座づくり,出産,授乳からなっていた.繁殖穴形成から授乳の間,母獣の訪問時刻は午前2時から3時に集中していた.産仔数は1頭または2頭で,授乳は2日に1回の頻度で規則正しく行われた.幼獣は生後約10日齢まで繁殖穴の中で授乳され,約10日齢から繁殖穴の外に出て授乳されるようになり,30–34日齢で授乳後に巣穴の外を出歩くようになった.母獣の授乳のための訪問のうち,授乳時間は非常に短く,滞在時間の大半を繁殖穴の入口の開け閉めに費やしていた.この巣穴の開け閉めに要する時間は,幼獣の成長とともに短くなった.今回の観察により,アマミノクロウサギの養育行動は,他のアナウサギ類と同様に非常に短時間で行われており,さらに幼獣の成長に合わせて養育にかかるコストを減らしている可能性が示唆された.

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  • 中本 敦
    57 巻 (2017) 2 号 p. 267-284
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    琉球諸島におけるこれまでのクビワオオコウモリの地理的分布に関する情報を整理し,分布の変遷としてまとめた.クビワオオコウモリの生息する琉球諸島は,熱帯を中心に多様化しているオオコウモリ類においては分布の北限にあたる.このような分布の辺縁部は,時に生存が困難であり,一般に分布境界があいまいな地域になることが予想される.特に飛翔能力を有するコウモリ類においては分布境界を超える島嶼間の移動が比較的簡単に生じるだろう.本研究の結果,1)クビワオオコウモリは,自然分散と局所絶滅を繰り返しており,経時的に分布範囲がかなり変化していること,2)少なくとも沖縄諸島個体群(亜種オリイオオコウモリ)の個体数と分布は,現在増加・拡大傾向にあること,3)いくつかの島の個体群(特に基準亜種エラブオオコウモリ)は,八重山諸島からの人為的な輸送に起源する可能性があることが明らかとなった.動物の分布の変遷はこれまでに予想された以上に短期間に広い範囲で起こっており,一部は過去の人為的な輸送の影響を強く受けている可能性が示唆された.今後,少なくともクビワオオコウモリの保護に関しては,現在進行中の分布変化に加え,人為的な移入などの歴史的な背景を含めて,総合的に議論していく必要がある.

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  • 安田 雅俊
    57 巻 (2017) 2 号 p. 285
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー
原著論文
  • 大石 圭太, 兒島 音衣, 畑 邦彦, 曽根 晃一
    57 巻 (2017) 2 号 p. 287-296
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    広葉樹林に隣接した針葉樹人工林における間伐施業のアカネズミ(Apodemus speciosus)とヒメネズミ(A. argenteus)の生息状況に対する影響を明らかにするため,鹿児島大学農学部附属高隈演習林で,170 mほど離れた2ヶ所に,それぞれスギ(Cryptomeria japonica)の人工林とそれに隣接する常緑広葉樹林にまたがる調査区を設定した.一方の調査区の人工林では,2012年8月~9月に材積比約50%の定性間伐を実施し(間伐区),もう一方では,間伐を実施しなかった(対照区).標識再捕法を用いて,両種の野ネズミの生息状況を調査したところ,間伐前は,両種ともに,間伐区と対照区の捕獲頻度の変動パターンは同調しており,両調査区の人工林において,捕獲頻度が2ヶ月以上連続で0になることはなかった.しかし,間伐直後には,対照区で,両種の野ネズミの生息状況に著しい変化がみられなかったのに対し,間伐区の人工林では,アカネズミでは2ヶ月連続,ヒメネズミでは少なくとも3ヶ月連続して,捕獲頻度が0になった.間伐区の人工林では,アカネズミは間伐後3ヶ月目から,ヒメネズミは遅くとも半年後から,新たな個体が侵入・定着し始め,林内植生が回復した間伐3年目には,両種の野ネズミの捕獲頻度や捕獲場所の分布は間伐前の状態に回復した.間伐施業は,野ネズミが生息できない状況を一時的に生じさせ,その影響は,アカネズミよりも,ヒメネズミに対して大きかったが,林内植生の回復とともに約3年でその影響は消滅したと考えられた.

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  • 寺田 文子, 釣賀 一二三, 長坂 晶子, 近藤 麻実, 深澤 圭太
    57 巻 (2017) 2 号 p. 297-306
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,ヒグマ(Ursus arctos)の個体数推定のために行うヘア・トラップ調査において,個体数推定の精度を向上させるために,ヒグマの体毛の採取効率が向上する(体毛の採取回数が多い)調査デザインを検討することを目的に,体毛の採取回数に影響する立地条件を明らかにした.「体毛が採取されない」というデータには,ヒグマがそもそもそこに存在しないため体毛が採取されなかったという場合が含まれる可能性があることから,採取回数に影響する立地条件を明らかにするには,調査地にヒグマが存在するかしないか(在・不在)に影響を与えている立地条件を同時に明らかにする必要がある.したがって,解析にはゼロ強調二項分布モデル(zero-
inflated binomial model)を用いて行った.その結果,北海道渡島半島に設定した調査地域においては,ヒグマの在・不在に対して明らかな影響を与える立地条件は確認されなかった.一方,体毛の採取回数に影響を与える立地条件としては,ササ属(Sasa spp.)の被度が低い場所において採取回数が多いことが明らかとなった.このことは,そのような場所にヘア・トラップを選択的に設置することで,生息密度推定における基礎データとなる体毛の採取回数を増加させ,かつ,採取効率の地点間の分散が減少することで密度推定への影響が低減され,より確かな推定値が得られることを示している.この結果をもとに,ササ属の被度が低い場所にトラップを設置して検証のための調査を実施したところ,ヒグマの在・不在および採取回数に影響を与える要因は検出されなかった.

    本研究の結果より,ヘア・トラップ調査を実施する場合には,ヒグマの分布状況に十分に配慮したうえで,トラップ設置地点のササ属の被度が低い場所にトラップを設置し調査を行うことが推奨される.

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  • 大竹 朝香, 北山 克己, 日野 輝明
    57 巻 (2017) 2 号 p. 307-313
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,人工種子を用いて種子の重さとニホンリス(Sciurus lis)による運搬行動との関係を定量的に明らかにすることである.2016年5月から11月にかけて愛知県名古屋市守山区東谷山を調査地とし,1 gから15 gまでの重さの異なる8種類の人工種子を給餌台に置いて,ニホンリスによる地上と樹上への運搬の割合と,それぞれ運搬される水平距離と高さを調べた.その結果,13 gまでは種子の重さとともに運ばれる割合が増加し,それ以降ではわずかに減少した.大きな種子は食べ終わるのに時間がかかり捕食にあう危険性が高まるために林内に運ばれたと考えられた.同様に,運ばれた距離もまた種子の重さとともに増加した.運搬距離は重さ13 gの人工種子で最大となり,平均は7.9 mであった.運搬した種子のうち樹上に運んだ割合もまた重さとともに増加したが,重さ10 gで最大となる曲線的な関係が得られたことから,重力に逆らって運ぶコストの影響が示唆された.樹上に運搬された高さについては,種子の重さとの間には有意な関係は得られなかった.

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短報
  • 高槻 成紀, 高橋 和弘, 髙田 隼人, 遠藤 嘉甫, 安本 唯, 菅谷 圭太, 箕輪 篤志, 宮岡 利佐子
    57 巻 (2017) 2 号 p. 315-321
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    哺乳類の食性分析は糞分析でおこなわれることが多く,組成内容の量的割合をもとに多様度が表現されることがある.これは基本的に場所や季節を代表させる集団としての多様度(「集団多様度」)である.一方,多様度は試料ごとにも算出でき(「個別多様度」),2種の多様度は動物種や状況により接近することがあるし,大きく異なることもあり,それぞれに意味があるが,これまで集団多様度だけが取り上げられがちであった.そこで6ヶ所の5種の動物を取り上げて2つの多様度の比較をおこなった.草食獣の例としてシカ(ニホンジカ)2例,カモシカ1例,イノシシ1例,果実依存の雑食性食肉目の例として,タヌキ2例,テン3例を用いた.草食獣では個別多様度と集団多様度は接近していたが,食肉目では個別多様度が低く,集団多様度ははるかに大きかった.また,食肉目の個別多様度と集団多様度の違いは,タヌキよりもテンで大きい傾向があった.この2つの多様性の違いが生じる背景を動物の体サイズ,食性,消化生理,食物の供給状態などと関連させて考察した.

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  • 渡邊 啓文, 船越 公威
    57 巻 (2017) 2 号 p. 323-328
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    大分県南東部の隧道内天井は,2013年~2017年の春~夏季の調査でテングコウモリMurina hilgendorfiとノレンコウモリMyotis bombinusの活動期のねぐらとして利用されていた.テングコウモリは5月~6月に10頭前後の個体が密集した集団を形成していた.この群塊は妊娠後期から末期に入った雌の集団であり,九州では初めての発見である.群塊体表の温度は単独個体よりも高く高体温を保持しており,胎児の成長促進に寄与していることが示唆された.テングコウモリは妊娠末期に移動して,他所で出産・哺育すると考えられる.

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  • 吉川 琴子, 谷地森 秀二, 加藤 元海
    57 巻 (2017) 2 号 p. 329-336
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    ニホンカワウソは1979年に高知県須崎市の新荘川で目撃された個体を最後に,現在では絶滅種とされている.これまでの報告では,目撃日時や場所に関する情報の蓄積が乏しかったため,1979年に目撃されたニホンカワウソに関する行動範囲や個体数などの詳細はわかってない.本研究では,須崎市教育委員会生涯学習課に保管されていたニホンカワウソの資料を電子化して保存するとともに,可能な限り目撃情報の日時と場所を特定し情報を整理した.新荘川周辺で時間や場所を特定できた目撃情報は276件あり,そのうち1979年の情報が111件であった.1979年は,短期間に首に身体的な特徴をもった個体ともたない個体が局所的に同時に見られた.加えて,同時期に人慣れしている個体としていない個体が局所的に見られたことから,この時期に目撃されたニホンカワウソは行動的にも特徴が異なっていた.1974年にはメスの個体,1975年にはオスの個体が新荘川周辺で生存していたことがわかっている.ニホンカワウソの寿命は10–15年と推定されていることから,1979年の新荘川周辺には複数個体生存していた可能性が示唆される.

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総説
  • 高槻 成紀
    57 巻 (2017) 2 号 p. 337-347
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    テンMartes melampusが利用する果実の特徴を理解するために,テンの食性に関する15編の論文を通覧したところ,テンの糞から97種と11属の種子が検出されていることが確認された.これら種子を含む「果実」のうち,針葉樹3種の種子を含む89種は広義の多肉果であった.ただしケンポナシHovenia dulcisの果実は核果で多肉質ではないが,果柄が肥厚し甘くなるので,実質的に多肉果状である.そのほかの8種は乾果で,袋果が1種(コブシMagnolia kobus),蒴果が7種であった.蒴果7種のうちマユミEuonymus hamiltonianusとツルウメモドキCelastrus orbiculatusは種子が多肉化する.それ以外の蒴果にはウルシ科の3種とカラスザンショウZanthoxylum ailanthoides,ヤブツバキCamellia japonicaがあった.ウルシ科3種は脂質に富み,栄養価が高い.ヤブツバキは種子が脂質に富む.果実サイズは小型(直径<10 mm)が70種(72.2%)であり,色は目立つものが76種(78.4%)で小さく目立つ鳥類散布果実がテンによく食べられていることがわかった.「大きく目立つ」果実は8種あり,このうち出現頻度が高かったのはアケビ属であった.鳥類散布に典型的な「小さく目立つ」果実と対照的な「大きく目立たない」な果実は3種あり,マタタビとケンポナシの2種は出現頻度も高かった.生育型は低木が41種,高木が31種,「つる」が15種,その他の草本が9種だった.これらが植生に占める面積を考えれば,「つる」は偏って多いと考えられた.生育地は林縁が20種,開放環境が36種,森林を含む「その他」が41種であった.こうしたことを総合すると,テンが利用する果実は鳥類散布の多肉果とともに,サルナシ,ケンポナシなど大きく目立たず,匂いで哺乳類を誘引するタイプのものも多いことが特徴的であることがわかった.

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報告
  • 徳田 誠, 吉岡 裕哉, 安田 雅俊, 明石 夏澄, 木下 智章, 副島 和則, 松田 浩輝, 川道 武男
    57 巻 (2017) 2 号 p. 349-353
    公開日: 2018/02/01
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    九州北西部(国道3号線以西)では,ムササビの確実な生息記録は近年ほとんどなく,絶滅のおそれがかなり高い.我々は,巣箱と自動撮影カメラを用いた樹上性小型哺乳類の調査により,2015年8月,佐賀県唐津市の八幡岳においてムササビの生息を確認した.これは,生息地が特定できる生体の確認情報としては佐賀県初の記録であり,九州北西部においても1968年以来47年ぶりの記録である.今回の動画では,アライグマが樹幹に登った後に,ムササビが樹上から地面へと落下し,地上を走り去る様子が撮影されていた.アライグマは九州北西部で急速に分布を拡大しており,ムササビを含めた在来種に及ぼす負の影響を今後注視する必要がある.

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  • 永田 幸志, 岩岡 理樹
    57 巻 (2017) 2 号 p. 355-360
    公開日: 2018/02/01
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    丹沢山地の札掛地区(神奈川県愛甲郡清川村)において,継続的に実施されているニホンジカ(Cervus nippon)の生息密度調査の長期データを用いて,生息密度の経年変化と捕獲との関係を検討した.調査は,毎年冬期(12月)と春期(4月)に区画法により実施した.既報の2002年12月から2007年4月までのデータに,あらたに2007年12月から2015年4月までの調査結果を加え,連続する13年間について分析を行った.神奈川県の丹沢山地では2003年度からニホンジカ管理計画に基づく管理捕獲等の事業が実施されているが,本調査地においては2007年度以降に同管理捕獲が実施された.冬期,春期ともに,捕獲実施後の生息密度の平均値(冬期6.5頭/km2,春期3.3頭/km2)は,捕獲実施前の生息密度の平均値(冬期15.2頭/km2,春期11.0頭/km2)と比べて有意に低く,管理捕獲により,調査地に生息するニホンジカの個体数が減少したことが示唆された.

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  • 片平 浩孝, 藤田 朋紀, 中尾 稔, 羽根田 貴行, 小林 万里
    57 巻 (2017) 2 号 p. 361-365
    公開日: 2018/02/01
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    鰭脚類を終宿主とする寄生虫(Corynosoma spp.)の人体感染が北海道で生じ,その症例報告が消化器病学および寄生虫学の専門誌に相次いで掲載された.感染例はこれに留まらず,引き続き新たな患者が確認されている.本寄生虫症はいずれも虫体が小腸に長期間潜伏し,適切な診断や処置の遅れに繋がりやすい特徴を有していた.感染数増加の背景を理解することや今後の動向監視を含め,本寄生虫症に対するさらなる情報の蓄積が望まれる.

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  • 田村 典子, 岡野 美佐夫, 星野 莉紗
    57 巻 (2017) 2 号 p. 367-377
    公開日: 2018/02/01
    ジャーナル フリー

    狭山丘陵の緑地に,2000年に特定外来生物キタリスの野生化が報告された.その後も引き続き本種の生息が確認されたため,2013年11月に,日本哺乳類学会からキタリスの早期対策の要望書が提出された.これを受けて,2014年4月から環境省事業として生息調査および捕獲対策が開始された.目撃情報,食痕,自動撮影による生息調査の結果,17地点でキタリスの生息が認められた.1地点をのぞく16地点は丘陵西側に位置する狭山湖周辺の緑地であった.2014年10月から2017年3月までに,この17地点で捕獲作業を行った結果,このうちの12地点で合計32個体のキタリスと1個体のニホンリスが捕獲された.3年間で,目撃情報数,食痕確認地点数,撮影件数いずれも著しく減少した.今後は,キタリスが狭山丘陵内に残存しているかどうかモニタリングを継続するとともに,周囲の山林へ逸出していないかどうか,広域の調査が必要となる.

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2016年度大会自由集会記録
奨励賞受賞者による研究紹介
フォーラム
  • 浅原 正和
    57 巻 (2017) 2 号 p. 387-390
    公開日: 2018/02/01
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    日本遺伝学会用語編集委員会が新たに遺伝学用語の和訳を策定し,2017年9月に用語集を発刊した.日本遺伝学会はこれに基づいて文科省に教科書の用語変更を求めていく方針だという.今回改訂された用語には,遺伝学以外の分野で用いられる用語も含まれる.中でも,進化学や生物多様性分野における最重要用語の一つである「variation」はこれまで「変異」と訳されてきたが,これを「(1)多様性,(2)変動」と訳すように変更し,「変異」は「mutation」の訳語として用いるように変更するという.しかし,歴史を紐解けば,variationの訳語としての「変異」は遺伝学そのものが誕生する以前から使われてきた.また,「変異」という用語は多くの派生語があり,現在も哺乳類学を含む,遺伝学以外の様々な自然史分野で広く使われている.このように広い分野で継続して使われてきた「変異」という日本語の意味する対象が突然variationからmutationに変更されてしまうと,これまで蓄積されてきた日本語文献について誤読が生じかねない.以上のように,variationの訳語変更は歴史的な正当性を欠き,学術的にも混乱を招きかねず,日本語という言語の価値を保つ上で問題がある.そのため,今後もvariationの訳語として,伝統的に用いられ,現在も広く使われている「変異」という訳語を残すことが望ましいと考えられる.

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