2018 年 58 巻 1 号 p. 49-62
動物の食物組成は平均値によって表現されることが多いが,同じ平均値でも内容に違いがあることがある.ニホンジカCervus nippon(以下シカ),ニホンカモシカCapricornis crispus(以下カモシカ),イノシシSus scrofa,タヌキNyctereutes procyonoides,アカギツネVulpes vulpes(以下キツネ),ニホンテンMartes melampus(以下テン)の糞組成の食物カテゴリーごとの占有率を高いものから低いものへと曲線で表現する「占有率-順位曲線」で比較したところ,さまざまなパターンが認められた.シカとカモシカでは占有率が小さく,頻度が高い例(「高頻度・低値」)が多く,イノシシでも同様であった.これに対して食肉目では占有率も出現頻度も多様であり,1)供給量が多く,栄養価が低い(あるいは採食効率が悪い)と想定される食物では「高頻度・低値」が多く,2)供給量が限定的で,高栄養と想定される食物では「低頻度・高値」(占有率-順位曲線はL字型)が多い傾向があった.テンでは果実が「高頻度・高値」であった.このパターンには供給量,動物種の食物要求や消化生理などが関係していると考えられた.この表現法の特徴などを整理し,その使用を提唱した.