2020 年 60 巻 2 号 p. 281-296
近年ではバイオロギングと呼ばれる動物装着型記録計(データロガー)を用いた手法により,直接観察することの難しい野生動物の研究が進んでいる.バイオロギングは当初,海生哺乳類の潜水生理学を研究するために使われ,その目的は限定的であった.現在では深度,遊泳速度,加速度,地磁気,位置,音響,心拍,動画など様々な項目が計測できるので,その用途が多様化している.本論文では,これまでにバイオロギングにより明らかにされてきた海生哺乳類の潜水生理,行動生態,バイオメカニクス研究について紹介する.近年,バイオロギングは動物の生態調査を調べるのに使われるだけでなく,海洋環境モニタリングや家畜・愛玩動物の管理にも応用されているので,その事例も紹介し,最後に今後の発展について検討する.