2020 年 60 巻 2 号 p. 351-358
長野県小諸市の許可捕獲体制の推移,ならびに,許可捕獲の際に発生するニホンカモシカCapricornis crispus(以下,カモシカとする)の錯誤捕獲状況について報告する.小諸市では許可捕獲実施主体を猟友会から行政へと移行させ,錯誤捕獲されたカモシカの放獣作業を行政職員が行う体制とした結果,不明な点の多かった錯誤捕獲の状況を把握することが可能となった.2016年4月から錯誤捕獲されたカモシカに耳標を取り付け,個体識別を実施した結果,44ヵ月間に68頭(延べ170回)が錯誤捕獲されていることが明らかとなった.このうち1頭は発見時に死亡しており,2頭は放獣翌日に衰弱死していた.35頭が複数回の錯誤捕獲を経験し,最も多い個体は14回の錯誤捕獲を経験していた.足くくりわなにより負傷する個体も数多く存在することから,錯誤捕獲を発生させない捕獲方法の確立や,錯誤捕獲個体を早く解放する捕獲体制の構築,放獣作業者ならびにカモシカに怪我をさせない放獣方法の確立と普及が必要であると共に,カモシカの錯誤捕獲に関する更なるデータの蓄積が求められる.