哺乳類科学
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原著論文
浜松市に定着したCallosciurus属リス類の遺伝的集団構造:ミトコンドリアDNA D-loop領域に基づく追跡調査とフィンレイソンリス由来ハプロタイプの優占
江口 勇也佐久間 幹大遠藤 優坂西 梓里鈴木 良実千々岩 哲嶌本 樹片平 浩孝
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2023 年 63 巻 1 号 p. 53-62

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抄録

静岡県浜松市では1980年以降に外来リス類が野生化し,市街地から郊外へと分布拡大が続いている.過去に実施されたミトコンドリアDNA D-loop領域を対象とする集団遺伝解析では,クリハラリスCallosciurus erythraeusに加えフィンレイソンリスCallosciurus finlaysoniiの混在が報告されているが,調査範囲は市街地の一部に限られており,分布拡大以降の実態は未詳であった.そこで本研究では,これら2種の分布について広域的に再検討することを目的に,2019年から2021年の間に市内で駆除された266頭を用いて,同領域を対象にハプロタイプの組成および分布を調べた.解析の結果,クリハラリスの体色パターンが見られた一方で,同種由来のミトコンドリアDNAを持つ個体は存在しておらず,フィンレイソンリス由来のハプロタイプ2型の優占が明らかとなった.市内におけるハプロタイプの分布については,幹線道路などの人工物の有無や植生との明瞭な関係は見られず,個体の移動分散が広く生じていることが示唆された.

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© 2023 日本哺乳類学会
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