哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
報告
北海道厚岸町別寒辺牛湿原におけるアライグマの初記録についての報告
田村 里立木 靖之
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 64 巻 1 号 p. 65-71

詳細
抄録

2020年8月に厚岸町内で初めてアライグマ(Procyon lotor)が1頭捕獲された.付近には国定公園である別寒辺牛湿原が位置しており,湿原への分布拡大や生息する在来種への影響が懸念される.そこで本研究では,別寒辺牛湿原におけるアライグマの生息の有無を明らかにするため,湿原を流れる別寒辺牛川流域において10箇所の調査地点を設定し,2021年6月~11月に痕跡調査・カメラトラップ調査・餌トラップ調査を行った.その結果,別寒辺牛湿原の北東部に位置するトライベツ川流域に設定した1地点において,足跡の発見と個体の撮影によりアライグマの生息を確認した.また,生息が確認された地点周辺におけるアライグマの酪農施設の利用状況を調べるため,生息を確認した地点周辺の酪農施設9軒と,初捕獲があった元酪農施設1軒において,痕跡調査とアライグマの目撃の有無を確認する聞き取り調査を行った.その結果,アライグマの痕跡は確認されなかったが酪農施設1軒で2018~2019年頃に,情報提供をもとに追加で聞き取り調査を行った元酪農施設1軒で2015~2016年頃にアライグマの目撃情報が得られ,別寒辺牛湿原およびその周辺の酪農施設においてアライグマの生息が確認された.以上の結果から,別寒辺牛湿原および北東部の酪農地帯においてアライグマの生息が確認されたが,生息情報は少なく,分布域は現段階では限定されていると予想された.

著者関連情報
© 2024 日本哺乳類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top