哺乳類科学
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報告
沖縄島北部におけるケナガネズミDiplothrix legata(ネズミ科)の巣材と利用樹洞の特徴
大和 直暉小高 信彦高嶋 敦史中田 勝士久高 奈津子久高 将洋小林 峻
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2024 年 64 巻 2 号 p. 215-225

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抄録

本研究では沖縄島,徳之島,奄美大島に固有のケナガネズミDiplothrix legataが巣材として利用した枝と樹洞の特徴を明らかにすることを目的とした.本種は樹洞に枝を運び込み巣や休息場所として利用する.沖縄島北部の森林において,本種による樹洞利用を確認し,その樹洞から利用した枝や葉を採集して,樹種名,樹洞の大きさ,利用した枝の形状を記録した.その結果,ケナガネズミが利用した樹洞から出現した枝の樹種は,沖縄島北部の森林における優占種のスダジイCastanopsis sieboldiiが最も多く,生葉がついた枝もついていない枝も確認された.また,枝には斜めの切り口があり,樹洞内に運び込まれていた枝の長さは50~544 mmであった.クマネズミRattus rattusが枝を切断した場合も斜めの切り口ができるが,小笠原諸島父島で採集したクマネズミが切り落とした枝よりも,ケナガネズミが利用した樹洞から出現した枝の方が長く,断面積や太さも大きい傾向があった.そのため,樹洞から出現し,切り口が斜めで,枝の長さが16 cm以上,枝の切り口の断面積が30 mm2以上,あるいは枝の直径が5.6 mm以上の場合,ケナガネズミが切り落とした枝と推定できると考えられる.本種が利用した樹洞は,ほとんどが枝折れや幹こすれが原因で形成された自然樹洞であったが,ノグチゲラDendrocopos noguchiiの古巣も利用していた.利用樹洞はスダジイに形成されたものが最も多く,胸高直径は28.9 cm以上の大型の樹木であった.本種の本来の生息地は,大型の樹洞が形成されるような大径木の存在する成熟した森林であると考えられる.

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