2025 年 65 巻 2 号 p. 129-134
バンドウイルカ(Tursiops truncatus)は,世界中に広く生息している小型のハクジラとして知られている.飼育下において,問題行動の一つである吐き戻し行動が頻繁に確認され,その低減方策の確立が求められている.本研究では,吐き戻し行動を減退させる環境エンリッチメントデバイスとしてボートフェンダーを使用して,鴨川シーワールドで飼育されている2頭のバンドウイルカの吐き戻し行動低減効果を観察した.実験では,昼給餌の後にボートフェンダーを投入する日としない日を設け,吐き戻し行動の観察を行った.その結果,ボートフェンダーを投入した日は,投入しない日に比べて吐き戻し行動の回数および吐き戻しを行う時間が比較的少ないことが判明した.今後,ボートフェンダー投入によるバンドウイルカの吐き戻し行動の低減策確立には,観察する個体数の増加とボートフェンダーによる吐き戻し低減効果の持続性についての検証が必要である.