2025 年 45 巻 2 号 p. 86-94
消費者の購買意図は,個人的要因(例えば,自己とブランドのつながり)および社会的要因(例えば,社会規範)によって決定される。しかし,「私」はブランドAが好きだが,「私の友人たち」はブランドBを薦めてくる,といったように,ブランドに対する個人的評価と社会的評価はしばしば葛藤する。このような葛藤状況において,消費者は個人的評価と社会的評価のどちらを優先して購買意思決定をするのか,先行研究では明らかにされていない。そこで本研究は,解釈レベル理論を用いて,ブランドの購買において消費者が本質的に重視しているものは何であるのかを明らかにすることで,このリサーチギャップに対応した。解釈レベル理論によると,人は抽象的マインドセットの時には,自身の行動目標に強く関連のある本質的な要素を重視するが,具体的マインドセットの時は,目標と関連の薄い,物事の副次的な側面にも注目するようになる。3つの研究を通じて,抽象的マインドセットの消費者はブランド選択において個人的要因(自己とブランドのつながり)のみを重視するが,具体的マインドセットの消費者は個人的評価に加えて社会的要因(社会規範)も重視していることが明らかになった。この結果は,ブランド購買において消費者が本質的に求めているのは,ブランドの社会的評価ではなく,個人的要因(自己とブランドのつながり)であることを示唆している。