マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
最新号
コンテンツビジネスを巡るマーケティング
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
編集委員長より
巻頭言
  • 小野 晃典
    2024 年 44 巻 1 号 p. 4-5
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
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    The content business is booming in Japan. Relatively new types of content, such as manga (cartoon) and anime (animation), are regarded as parts of Japanese pop culture, and marketing is being used to attract fans around the world. Most businesses also reuse existing hit content and create various goods and services. Moreover, people who live in places that have been filmed for manga and anime are using destination marketing to attract tourists or “pilgrims” who regard the places as sacred and want to visit. Other kinds of content, such as music, novels and paintings, are also important parts of content in Japan, and are the subjects of thriving marketing efforts. However, there is insufficient academic research in this area. This special issue includes five articles using datasets collected in Japanese content markets to fill this research gap.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― 原作ファンと原作未読者の比較 ―
    菊盛 真衣, 石井 隆太
    2024 年 44 巻 1 号 p. 6-16
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/06
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    J-STAGE Data 電子付録

    コンテンツビジネスにおける古典的な戦略の一つは,本の映画化である。そこでは,本メディアにおける文字コンテンツが,映画メディアにおける映像音声コンテンツへと派生する。映画の原作として最も使われるジャンルは小説である。小説原作映画の特徴は,2種類の映画消費者が存在することである。すなわち,原作小説を読み,それが好きだから映画を観る「原作ファン」と,原作を読まずに映画を観る「原作未読者」である。本論は,2つのスタディを通じて,彼らのeクチコミ発信行動を探究する。Study 1では,「原作ファンと原作未読者のどちらがeクチコミ発信に積極的であるのか?」という問いに取り組み,原作未読者に比して,原作ファンの方がeクチコミを発信しやすいということを示す。Study 2では,主たるeクチコミ発信者である原作ファンに焦点を合わせて,「彼らのeクチコミ発信メカニズムはどのようなものか?」という問いに取り組み,原作ファンは,社会的ニーズを満たすために,eクチコミを発信するということを示す。本論は,eクチコミ発信に関する消費者行動の理解に貢献すると共に,映画化ビジネスに携わる実務家に有益な知見を提供する。

  • ― コンテンツ再現性の影響 ―
    竹内 亮介, 王 珏
    2024 年 44 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/06
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    J-STAGE Data 電子付録

    精緻化見込みモデルに関する広告研究が予測する現象と異なり,非メッセージ要素を強調したコンテンツ広告は,精緻化見込みの高い消費者を魅了する潜在性を秘めている。本研究は,(1)そのような消費者はなぜ非メッセージ要素を描写するコンテンツ広告に好意的な態度を形成するか,(2)彼らのコンテンツ広告態度は製品の消費を喚起するかという2つの問いに解答する。仮説を提唱する際に導入するのが,コンテンツ再現性(オリジナルの製品コンテンツを広告が忠実に反映する程度)という新概念である。スタディ1~2においては,コンテンツ再現性を高める広告要素(例えば,キャラクター・物語・設定・色彩・音楽)は論拠として機能するがゆえに,精緻化見込みが高い場合,コンテンツを再現しない広告より再現する広告に対して,消費者が好意的な態度を形成することを示す。スタディ2においては,精緻化見込みが高い場合,コンテンツ再現性が購買意図に正の影響を及ぼすことを示す。本研究は,精緻化見込みモデル・コンテンツビジネス・マーケティングミックスに関する既存研究に学術的貢献を果たすだけでなく,広告態度と購買意図を高めるための実務的洞察も提示する。

  • 千葉 貴宏, 北澤 涼平
    2024 年 44 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/06
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    J-STAGE Data 電子付録

    サブスクリプションの先行研究は,複数コンテンツが一定期間に消費されそれらへの評価が連動しにくいというコンテンツの特性に注目してこなかった。そこで本論は,その特性を踏まえて,良コンテンツ比率,コンテンツ選択軸,および独自コンテンツ評価水準という条件の水準や組合せが,消費者の満足度および継続意図に及ぼす影響を理論的および実証的に吟味した。分析の結果,1)良コンテンツ比率,すなわち高く評価されたコンテンツの比率は満足度および継続意図に対して最も影響力のある要因であるということ,2)コンテンツ選択の主軸が配信サービスによるオススメではなく消費者自身であるとき,高く評価されたコンテンツの比率の満足度への影響は大きいということ,3)配信サービスが独自に企画・制作したコンテンツの影響は,高く評価されたコンテンツの比率の影響に比べて,満足度については相対的に低く,継続意図については同程度であるということ,そして,4)配信サービスが独自に企画・制作したコンテンツの満足度への影響は,コンテンツ選択の主軸が消費者自身であるときに限っては,高く評価されたコンテンツの比率に匹敵して高いということが見いだされた。

  • 小野 雅琴
    2024 年 44 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/06
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    J-STAGE Data

    本研究は,消費者がコンテンツを利用する際に,従来型の,コンテンツの入ったメディアを所有する「ソリッド消費」と,新しい,コンテンツのサブスクリプションサービスを利用する「リキッド消費」のうち,いかなる理由で,いずれを選択するのか,ということを探ろうとする研究である。映画,小説,絵画,3種類のコンテンツについて調査を行った結果,製品コストや製品オーナーシップは,どのコンテンツについても共通して,サブスクリプションサービスの選択に有意な影響を及ぼしているということが示された。一方,製品バラエティは,絵画コンテンツの選択にのみ有意な影響を与え,製品クオリティは,小説と絵画コンテンツの選択に有意な影響を与える結果となった。コンテンツ間の差異を見出した本研究の結果は,理論的および実務的な示唆を提供している。

  • ― 聖地巡礼ノートの分析から ―
    津村 将章, 大方 優子, 岩崎 達也, 豊田 裕貴
    2024 年 44 巻 1 号 p. 47-57
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/09
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    アニメ聖地巡礼は,新しい形のコンテンツツーリズムとして注目されており,観光のみならず地域振興にも影響を与えることが分かっている。アニメ聖地巡礼を行っている旅行者は全体の12%程度であり,再訪率の高さや動機など,多くの知見がこれまでの調査からも明らかになっている。しかしながら,アニメ舞台(聖地)を旅する聖地巡礼者は,どこから来て,何を求めているのかの詳細については,まだ十分に明らかになっていない。そこで,本研究では聖地巡礼者がその目的地である聖地で聖地巡礼ノートにどのような書き込みを行っているかに着目した。旅においては,移動距離は行動を規定する重要な要因となる。そこで,ターゲットの異なるアニメ3作品の聖地巡礼ノートを対象として,出発地から目的地までの移動距離に着目して分析を行った。その結果,近距離旅行者と長距離旅行者とでは書き込み内容が異なることが確認された。近距離旅行者はキャラクターやイベントなどに関する書き込み比率が高く,長距離旅行者は聖地である地域の魅力についての書き込み比率が高いことが明らかとなった。

受賞論文 / 招待査読論文
  • 西本 章宏, 勝又 壮太郎
    2024 年 44 巻 1 号 p. 58-67
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    [早期公開] 公開日: 2024/05/06
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    本研究は,決済手段に対する消費者の心理的所有感が,支払意思額(willingness to pay: WTP),受取意思額(willingness to accept: WTA)に及ぼす影響について明らかにする。本研究では,2種類の決済手段(現金とスマートフォン決済)を対象として,2つの実験を行った。実験1では,参加者に架空の購買シナリオを読んでもらった。その結果,相対的に心理的所有感が低い決済手段が支払い時に選択される傾向にあり,選択された決済手段による支払いの方がWTPは高くなることを明らかにした。実験2では,参加者に4種類の架空の売買シナリオのいずれか2つを読んでもらった。その結果,相対的に心理的所有感が高い決済手段が受け取り時には選択される傾向にあり,選択された決済手段による受取の方がWTAは低くなることが明らかになった。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • ― 概念的課題と先行/結果要因の検討 ―
    松原 優
    2024 年 44 巻 1 号 p. 68-75
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
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    消費者のハピネスやウェルビーイング(以下,「“幸せ”」)に対する注目が高まっており,その中でもブランドは個人の“幸せ”に結びついていると考えられている。一方で,ブランド研究において消費者の“幸せ”に焦点を当てた理論的な検討はまだ初期段階にある。そこで,本文献研究はマーケティング研究のさらなる発展に向け,ブランド研究における消費者の“幸せ”を扱った研究を概括し,今後に向けた重要研究課題を提示することを目的とした。“幸せ”の概念,先行要因,結果要因という3つの観点からレビューを行った結果,(1)概念が整理されていないこと,(2)負の影響を及ぼす先行要因に関する検証が不足していること,(3)一般的な“幸せ”の結果要因についての検討が比較的少ないこと,などが示唆された。

マーケティングケース
  • ― トランスコスモス株式会社のコンタクトセンター事業における取り組み ―
    速水 建吾, 恩藏 直人
    2024 年 44 巻 1 号 p. 76-85
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
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    顧客満足の向上は今日のマーケティングにおける重要な目標の一つとなっているが,顧客の期待に応えることは決して容易ではない。本稿は,トランスコスモス株式会社のコンタクトセンター事業を取り上げ,サービスに対する不満を減らし顧客満足を高める取り組みについて検討した。トランスコスモス株式会社は,AI音声ソリューション「transpeech」の導入により,顧客と従業員の感情状態をリアルタイムで把握し,顧客の不満を事前に防ぐとともに,満足度を向上させることに成功した。また同社が実施した従業員向けの研修制度やミッション,ビジョン,バリュー(MVV)の策定とその実践は,従業員満足の引き上げを促し,結果的に顧客満足の向上に繋がった。トランスコスモスの事例は,AI技術の活用といった技術的アプローチと従業員向け施策の人的アプローチの両立が,従業員満足を介して顧客満足を高めるうえで重要であることを示唆している。

  • ― 徳島赤十字病院のインターナル・マーケティング ―
    川上 和真, 冨田 健司
    2024 年 44 巻 1 号 p. 86-95
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
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    医療機関の経営を取り巻く環境は厳しい。医療政策や患者の動向を注視しながら,限られた医療資源を効果的かつ効率的に使用することが求められ,苦慮する医療機関も多い。徳島赤十字病院は,短い入院日数の実現と新入院患者の獲得により,治療を必要とする多くの患者に医療サービスを提供している。自院のスタッフに患者志向を動機づけるインターナル・マーケティングに留まらず,サービス・プロセスが効果的かつ効率的に実施できるように,サービス環境(人工物,制度,仕組み等)を整えていた。また,インターナル・マーケティングを病院「内」に限定するのではなく,病院「外」の地域医療機関や救急隊,時には顧客である患者にも拡張し,自院だけでなく地域協働によるサービス向上に取り組んでいる。徳島赤十字病院の取り組みは,医療業界だけでなく,他の業界にも重要な示唆を与えてくれる事例である。

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