マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
最新号
生成AIの可能性
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
  • 水越 康介
    2025 年45 巻4 号 p. 265-267
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    This special issue focuses on generative AI, which has garnered significant attention in recent years, and explores its impact on business, particularly marketing, and its potential. History shows that technologies are shaped not by initial expectations, but through social practices. The five articles in this issue examine generative AI from multiple perspectives. Two studies address consumer behavior, emphasizing anthropomorphism and emotional AI in shaping advertising evaluations and self-disclosure in travel planning. Three further contributions turn to organizational and industry contexts: exploring AI-assisted programming and tacit knowledge transfer, the role of generative AI in human resource management, and transformations in marketing communications, including shifting power relations between brands, platforms, and consumers. Together, these studies demonstrate the diverse ways in which generative AI is being applied, perceived, and debated.

特集論文 / 招待査読論文
  • 牧野 耀, 小倉 優海, 厳 秀延
    2025 年45 巻4 号 p. 268-278
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    [早期公開] 公開日: 2025/09/04
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    J-STAGE Data 電子付録

    近年,バーチャルインフルエンサーが登場している。アジア初のバーチャルインフルエンサーであるimmaは,SNSで活躍し,さらには,ラグジュアリーブランドCoachの広告に起用された。先行研究では,バーチャルインフルエンサーは実用財との適合度が高く,快楽財においては人間のインフルエンサーのほうが好ましいと指摘されてきた。しかし,現実には,バーチャルインフルエンサーが快楽財の広告に使用される事例も見られ,理論と実態に乖離が存在している。そこで,本研究では,快楽財において,バーチャルインフルエンサーが効果的に機能する条件として,消費者の擬人化傾向と製品知識に着目し,探索的調査を行った。その結果,特定の快楽財において,擬人化傾向が高く,製品知識が高い消費者においては,バーチャルインフルエンサーの有効性が示された。本研究は,バーチャルインフルエンサーと快楽財は適合度が低いとする従来の知見に対して新たな知見を提供するとともに,快楽財におけるバーチャルインフルエンサーの効果的活用に向けた実務的示唆を提示した。

  • ― 旅行プランニングにおけるAIの活用 ―
    小谷 恵子
    2025 年45 巻4 号 p. 279-289
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    [早期公開] 公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    J-STAGE Data

    生成AIは,ユーザーの感情を理解し,共感や配慮を表現する能力を備えている(「感情AI」)。感情を有するかのように振る舞うAIに人は親密さや擬人化を感じ,信頼関係の構築に寄与するとされる。本稿では,AIによる旅行プランニングのケースを用いて探索的な調査を実施し,AIとの関係性と自己開示の意向についてテキスト分析と統計的な検定から,以下の3点を導いた。第一に,AIの感情に対応できる能力を知覚することで,AIとの親密さ,擬人化,信頼を感じること,第二に,感情AIとしての認知の高さは,親密さ,擬人化に加え信頼に影響すること,第三に,AIに対して行動より感情の開示意向が高くなる傾向があることである。これらは,AIを使って感情データを積極的に取得できる可能性を示しており,顧客接点におけるパーソナライズや顧客体験の高度化に期待ができる。感情AIは多様なサービスへの応用が可能であり,消費者の内的思考の理解に基づいた新たなマーケティング・アプローチとして機能し得ることを示唆している。

  • 依田 祐一, 日高 優一郎
    2025 年45 巻4 号 p. 290-300
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    [早期公開] 公開日: 2025/08/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    本稿では,人と生成AIが協働する新たな方法であるAIペアプログラミングによるソフトウェア開発の実践を対象に,特に暗黙知に着目し,人と生成AIの協働の方法について,知識の相互移転の観点から探索的に明らかにする。学術的には,生成AIベースのITケイパビリティと呼称しうる新たな組織能力の萌芽を特定し,その発現メカニズムとともに示す。その中核として,人とAIという異なる知の主体間における特異な双方向の知識移転プロセスが存在することを示す。具体的には,AIが解釈可能な方法で暗黙的な認識を含めて効果的に形式知化する能力及びその限界の認識,ならびにAIが生成したコード等の形式知の根拠について人が文脈とともに能動的に解釈・評価し内面化していく能力である。実践的には,人と生成AIの協働のプロセスを示し,新技術を駆使したソフトウェア開発の方法,そして人材教育への指針や実践上の手がかりを提供する。

  • 西村 孝史
    2025 年45 巻4 号 p. 301-311
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    本研究では人事部門に所属する実務家に2時点のインターネット調査を実施し,人事業務における生成AIの活用実態を明らかにした。実態を把握するために先行研究に基づいてピープルアナリスティクスだけでなく,人事部門が生成AIをどの程度活用しているのかを把握するための項目を作成した。分析の結果,第一に,人事部門にとって生成AIは今のところ「味方」であり,高業績ワークシステム(HPWS)の補完的な機能やHR-Lineの関係性を向上させることで組織成果に寄与しており,生成AIがHPWSの「運用」部分を担っていることを指摘する。第二に,生成AI支援型のHRMは,新しいタイプのHPWSになりうる可能性があり,別のHPWSへの変換プロセスの研究となりうることを示す。他方で,人事部門の持つ生成AIの知識は脆弱であり,且つ一部の大手や先進的な企業を除き生成AIの活用は進んでおらず,見通しについても懐疑的で生成AIが全面的に切り替わることは想定していないことが判明した。

  • ― ブランド企業とプラットフォーマー・消費者の間の力関係はどうなるか ―
    及川 直彦, 鎌田 啓輔
    2025 年45 巻4 号 p. 312-321
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    [早期公開] 公開日: 2025/08/22
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    生成AIのマーケティング・コミュニケーション(MarCom)における活用法と,それらの普及がブランド企業,プラットフォーマー,消費者にもたらす影響と力関係の変化について,Porter and Millar(1985)およびPorter(2001)の考察のステップに基づいて検討した。生成AIはMarComサービスの提供者側であるブランド企業やプラットフォーマーにおいて個別対応の自動化と最適化に活用され,MarComサービスの利用者側である消費者においてブランド選択や問題解決に利用され,これらの利活用がもたらす影響により,「特定のプラットフォーマーへの集中」「複数のプラットフォーマーとブランド企業の分散的な使い分け」「消費者主導のプラットフォーマーやブランド企業との関係の再編」の三つの力関係の変化の可能性が提示された。本研究は,生成AIのマーケティングや経営における意味合いについて議論を活性化させ,今後の実証研究の基盤を提供する。

受賞論文 / 招待査読論文
  • ― 原作ファンと原作未読者の比較 ―
    菊盛 真衣, 石井 隆太
    2025 年45 巻4 号 p. 322-332
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    J-STAGE Data

    コンテンツビジネスにおける古典的な戦略の一つは,本の映画化である。そこでは,本メディアにおける文字コンテンツが,映画メディアにおける映像音声コンテンツへと派生する。映画の原作として最も使われるジャンルは小説である。小説原作映画の特徴は,2種類の映画消費者が存在することである。すなわち,原作小説を読み,それが好きだから映画を観る「原作ファン」と,原作を読まずに映画を観る「原作未読者」である。本論は,2つのスタディを通じて,彼らのeクチコミ発信行動を探究する。Study 1では,「原作ファンと原作未読者のどちらがeクチコミ発信に積極的であるのか?」という問いに取り組み,原作未読者に比して,原作ファンの方がeクチコミを発信しやすいということを示す。Study 2では,主たるeクチコミ発信者である原作ファンに焦点を合わせて,「彼らのeクチコミ発信メカニズムはどのようなものか?」という問いに取り組み,原作ファンは,社会的ニーズを満たすために,eクチコミを発信するということを示す。本論は,eクチコミ発信に関する消費者行動の理解に貢献すると共に,映画化ビジネスに携わる実務家に有益な知見を提供する。

投稿査読論文
  • 牧野 耀, 小林 巳尋
    2025 年45 巻4 号 p. 333-341
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    [早期公開] 公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    電子付録

    本研究の目的は,長い年月を経ても一貫性を保ちうる製品デザインを組み込んだ製品開発プロセスについての理解である。ブランドの長期的な存続には,ブランドの一貫性の維持と市場環境に継続的に適応するための革新の必要性が指摘されているが,それが可能となる製品デザインを組み込んだ開発プロセスについて理解が不足している。そこで,ロングセラー・ブランド化や普遍的なデザインに関する先行研究レビューを行った上で,同一企業による2つのロングセラー・ブランドの開発過程について分析した。事例分析の結果,共通する重要なプロセスが,1.研究,2.洞察,3.本質化,4.探索,5.開発,6.普遍化,7.普及,8.拡張の8つにまとめられた。特に,開発プロセスでの本質化と普遍化が満たされることで,維持と革新に適した製品デザインとなることが示された。

マーケティングケース
  • ― 能登半島地震における石川県の取り組み ―
    會澤 裕貴, 中塚 健也, 水越 康介
    2025 年45 巻4 号 p. 342-352
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    本稿では,2024年1月1日に起きた令和6年能登半島地震を受けて,石川県が展開した応援消費に関する取り組みを紹介する。この取り組みでは,消費を通じて被災地を支援しようとする気持ちを喚起し,人々が一丸となって復興を推し進めることができるように,震災直後から継続的に様々な取り組みが進められてきた。この取り組みは,フェーズ1からフェーズ3の段階を経て,県内外の企業や自治体などのステークホルダーとの連携や,関係人口の拡大に寄与している。フェーズ1では,応援消費の象徴となるロゴマークが制定され,その利用と活用を通じて,主に石川県内での協力体制の構築が始まった。フェーズ2では,国の被災地支援策である「北陸応援割」の開始とともに,東京のアンテナショップ「八重洲いしかわテラス」が開店し,県外でも応援消費が活性化した。フェーズ3では,動画の制作・展開をはじめ,さらなるステークホルダーとの協業が進んだ。その後の令和6年奥能登豪雨による複合災害を経験して,継続的にプロジェクトは拡大した。本事例は,大災害からの復興において公共組織が果たす役割を明らかにするとともに,応援消費の重要性や有効性を提示している。

書評
編集後記
feedback
Top