マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
最新号
顧客経験(CX)
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
  • 須永 努
    2025 年 45 巻 2 号 p. 83-85
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    This special issue focuses on the customer experience, a topic that has garnered significant attention from scholars and practitioners over the past few decades. Numerous studies have been conducted leading to substantial advances in our understanding of this concept. However, customer experiences are profoundly transformed by state-of-the-art technologies such as artificial intelligence (AI) integrated into robots, internet of things (IoT), augmented reality (AR), virtual reality (VR), and mixed reality (MR). Thus, there remains a need to investigate how these new technologies influence customer experiences and whether they encourage prosocial behaviors. The authors of this special issue explored the relationship between consumers’ mindsets (abstract vs. concrete) and self-brand connection/group norms in brand experiences. Additionally, the issue includes findings from interviews with top management at major retailers regarding their efforts and attitudes toward sensory marketing. The latter half of this issue presents research on the customer experience through the lens of new technology, examining aspects such as social networking services, AI-enabled smart speakers, and avatar-like assistants in the e-commerce shopping experience.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― 抽象的マインドセットの時に消費者は「自己とブランドのつながり」を重視する ―
    杉谷 陽子, 外川 拓
    2025 年 45 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/03/20
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    データリポジトリ 電子付録

    消費者の購買意図は,個人的要因(例えば,自己とブランドのつながり)および社会的要因(例えば,社会規範)によって決定される。しかし,「私」はブランドAが好きだが,「私の友人たち」はブランドBを薦めてくる,といったように,ブランドに対する個人的評価と社会的評価はしばしば葛藤する。このような葛藤状況において,消費者は個人的評価と社会的評価のどちらを優先して購買意思決定をするのか,先行研究では明らかにされていない。そこで本研究は,解釈レベル理論を用いて,ブランドの購買において消費者が本質的に重視しているものは何であるのかを明らかにすることで,このリサーチギャップに対応した。解釈レベル理論によると,人は抽象的マインドセットの時には,自身の行動目標に強く関連のある本質的な要素を重視するが,具体的マインドセットの時は,目標と関連の薄い,物事の副次的な側面にも注目するようになる。3つの研究を通じて,抽象的マインドセットの消費者はブランド選択において個人的要因(自己とブランドのつながり)のみを重視するが,具体的マインドセットの消費者は個人的評価に加えて社会的要因(社会規範)も重視していることが明らかになった。この結果は,ブランド購買において消費者が本質的に求めているのは,ブランドの社会的評価ではなく,個人的要因(自己とブランドのつながり)であることを示唆している。

  • ― 有効活用に向けたインタビュー調査による検討 ―
    石井 裕明, 平木 いくみ, 外川 拓, 恩藏 直人
    2025 年 45 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    五感の活用を重視したセンサリー・マーケティングの効果や影響は,消費者行動研究を中心に多くの議論が進められてきた。近年では,多様な視点から検討が進められたことにより,同一の刺激が異なる消費者反応を生じさせる状況や条件も明らかにされてきている。こうした点を踏まえると,企業がセンサリー・マーケティングを効果的に活用するには,センサリー・マーケティングの効果や意義を十分に把握し,様々な状況や条件を考慮して自社の狙いや方針に合った施策を立案できることが重要である。しかしながら,先行研究を確認してみると,企業側のセンサリー・マーケティングへの意識や考えに注目した議論は取り組まれていない。そこで本研究では,我が国の有力小売企業10社の経営者および経営幹部にインタビュー調査を実施し,彼らがセンサリー・マーケティングに対して抱いている意識や考えを探索的に検討した。インタビュー調査の整理からは,経営者が考えるセンサリー・マーケティングの重要性,センサリー・マーケティングの活用方針,センサリー・マーケティングに期待される効果,センサリー・マーケティングを成果に結びつけるための要因が明らかにされた。

  • 土方 嘉徳, 森本 雅也子
    2025 年 45 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    電子付録

    Instagramにおいて,若い女性ユーザを対象として,どのような投稿写真がエンゲージメントの1つである「いいね!」を獲得しやすいのかについて調査を行った。本調査では,写真中の顔の有無と身体的魅力,笑顔の程度,顔への加工の有無,テキスト長,タグ数と「いいね!」数との関係を,写真のカテゴリ(本研究では「コンテキスト」と呼ぶ)ごとに調べた。コンテキストには,「成人式」,「卒業式」,「カフェ」,「国内旅行」を取り上げた。それぞれのコンテキストで200個の投稿を収集し,上記の特徴を人手またはコンピュータプログラムで付与した。これらのデータに対して,相関分析と2群の代表値の検定を行った。その結果,卒業式以外のコンテキストで,投稿者の顔を含む写真は多くの「いいね!」を獲得していた。また,卒業式とカフェのコンテキストでは,身体的魅力が高い場合に多くの「いいね!」を獲得していた。成人式とカフェ,また弱い結果ではあるが卒業式でも,顔に対する加工を行っているものは,「いいね!」の数が少なかった。

  • ― 消費者ウェルビーイングを促進させる自己拡大と自己拡張の効果検証 ―
    西本 章宏
    2025 年 45 巻 2 号 p. 114-123
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    J-STAGE Data 電子付録

    現代では,スマートフォンやウェアラブル端末,AI搭載のIoT家電など,さまざまなスマートオブジェクトが私たちの生活に浸透している。スマートオブジェクトとの共同生活で多くの恩恵がもたらされる一方で,そのような日常が私たちに幸せな未来をもたらすのだろうか。本研究は,AI搭載のスマートスピーカーの2つの主要なインテリジェンス特性が消費者のウェルビーイングに与えるメカニズムを,手段-目的連鎖モデルの視座から検討する。本研究では,SVAsのユーザー234名に対してオンライン調査を行い,構造方程式モデリングによって分析を行った。その結果,自律性は主に消費者の自己拡大を引き起こし,その相互作用経験は直接的にSVAsとの共同生活に対する主観的ウェルビーイングを高め,間接的にもSVAsに対する擬人化と親近感を媒介して高めることがわかった。一方で,双方向性は消費者の自己拡張のみを引き起こし,その相互作用経験は直接的にSVAsとの共同生活に対する主観的ウェルビーイングを高め,間接的にはSVAsに対して親近感のみを媒介して高めることがわかった。

  • 西井 真祐子
    2025 年 45 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/02/21
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    J-STAGE Data 電子付録

    小売り環境において顧客経験(CX)を向上させる重要な要素の一つは,販売員の存在である。Eコマース環境では通常,人間の販売員は不在であり,代わりにアバターのようなアシスタントが存在する場合がある。先行研究では,オンライン・ショッピング・サイトなどのオンライン環境において,擬人化されたアバターが消費者の購買意欲や製品に対する態度を向上させることが示唆されている。しかしながら,アバターの存在がEコマース・サイトを訪れて行われる購買プロセス全体を通じて,顧客経験の満足にどのような影響を与えるのかについては明らかになっていない。先行研究では,アバターがオンラインでの体験において介入感を消費者に与え,ネガティブな反応を得ることが示されている。したがって,購買状況や消費者の個人的な特性によって,アバターの存在が有益である場合とそうではない場合が想定される。本研究では,架空のオンライン・ショッピング・サイトで模擬的な顧客経験を行う2つの実験を実施した。その結果,アバターの存在に対する評価は購買プロセスの段階によって異なる可能性が示された。さらに,消費者の孤独感が高い場合,アバターの出現頻度が高い方が顧客経験の満足度が向上する一方で,孤独感の低い消費者では,アバターの出現頻度が低い方が顧客経験の満足度が高くなることが明らかになった。本研究の知見は,Eコマース・サイトでの顧客経験の満足度を高める顧客経験の設計に役立つものである。

受賞論文 / 招待査読論文
  • ― 視覚情報としての文字に注目して ―
    外川 拓, 磯田 友里子, 鈴木 凌, 恩藏 直人
    2025 年 45 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    人は,自身の名前に含まれた文字を,含まれていない文字に比べて好ましく評価する。この傾向はネームレター効果と呼ばれ,ブランド選択をはじめとする様々な意思決定にも影響を及ぼす。例えば,先行研究によると,Lで始まる名前の消費者(例えば,Lundy)は,他の文字で始まる名前の消費者(例えば,Thomas)に比べ,名前の頭文字が一致するLexusを購入する傾向がある。本研究では,ブランド・ネームが漢字で表記されている場合,ネームレター効果がどのように生じるのかについて検討した。先行研究によると,漢字は聴覚情報ではなく,視覚情報として処理される。この言語的性質を踏まえ,漢字のネームレター効果は,ブランド・ネームと顧客の姓における表記(vs. 読み)の一致によって生じると予測した。総合胃腸薬の購買データを分析した結果,表記と読みが太田胃散と一致する太田姓の消費者は,読みのみが一致する姓(例えば,大田姓や多田姓)の消費者や,読みも表記も一致しない姓の消費者に比べて,太田胃散を購入する確率が高かった。本研究の結果は,ブランド・ネームに関する重要な理論的,および実務的示唆を提供している。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • ― 1961年~1970年の傾向 ―
    外山 昌樹
    2025 年 45 巻 2 号 p. 140-147
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/02/07
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    本研究は,黎明期(1961年~1970年)における我が国の観光マーケティング研究の傾向を明らかにすることを目的とした。主要な学術研究に関するデータベースと論文検索エンジンを対象に文献数を調査したところ,最終的に20の文献が抽出された。これらの文献を対象に,TCCMフレームワークを用いて研究傾向を分析した。その結果,以下の4つの傾向が明らかになった。(1)Theory(理論)については既存理論の活用が行われつつ,新たな理論モデルの提示が試みられていた。(2)Context(文脈)については,訪日外国人旅行市場や観光産業を対象とした研究が相対的に多かった。(3)Characteristics(特性)については,観光マーケティングに影響を与える変数としての外部環境への着目度が高く,観光マーケティングの成果として外貨獲得による経済発展や国際平和への貢献に対する言及が多かった。(4)Methodology(方法)については,実証研究が少なかった。

  • ― B2Bブランド・コミュニティおよびプロフェッショナル・コミュニティ研究の文献レビュー ―
    長橋 明子
    2025 年 45 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/02/24
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    2000年代以降,インターネットやソーシャルメディアの普及を背景にコミュニティへの関心が高まっている。業務上の課題解決や個人の能力向上のためコミュニティに参加するビジネスパーソンも増える中,B2C(企業対消費者取引)市場に限らずB2B(企業間取引)市場においても顧客間の知識共有を目的としたコミュニティの取り組みが増加している。B2Bを対象としたコミュニティ研究には2000年前後に始まる二つの潮流が存在する。一つ目はブランド・コミュニティ研究の枠組みの中でB2Bブランドに焦点を当てた研究であり,二つ目はプロフェショナル間の知識共有を対象としたプロフェッショナル・コミュニティに関する研究である。本研究では,B2Bブランド・コミュニティとプロフェッショナル・コミュニティという二つの研究領域を対象に文献レビューを行い,コミュニティ参加行動の理論的背景と先行要因および結果を概括するとともに,今後の研究課題を提示する。

投稿査読論文
  • 三富 悠紀
    2025 年 45 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/02/07
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    電子付録

    本研究は,絶対時刻表現(××/○○~××/◇◇)と終了時点強調表現(××/◇◇まで)の2つの時間表現の影響について,検討したものである。具体的には,期間限定セールの実施期間の時間表現を変えることによって,セール終了までの残り時間の評価とセールに対する参加意欲にどのような影響を与えるかについて検討している。時間表現と提示タイミングの2点を操作した期間限定セールの広告の実験から,次の2点が明らかになった。(1)セール終了までの残り時間が十分ある場合,終了時点強調表現を用いることで,消費者にセール終了までの残り時間をより少なく知覚させる可能性が高いこと,(2)セール終了までの残り時間の評価は,直接的にはセールへの参加意欲に負の影響を与えるが,時間圧力を介することで間接的に正の影響を与えることの2点が明らかになった。

マーケティングケース
  • ― 日本の視点から ―
    金 春姫, 高橋 玲央奈, 古川 一郎
    2025 年 45 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/03/31
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    電子付録

    中国ゲーム市場は改革開放後の1980年代初期にスタートし,政府の産業政策の動きと社会経済的コンテキストの中で独自の成長を遂げ,今や米国と並んで世界最大規模の市場となっている。そんな中で,中国企業は2000年代初期にゲーム産業に進出し,モバイルゲーム分野をメインに短期間でグローバル競争力を身につけ,2010年代後半から本格的なグローバル展開をはじめた。本稿はまず前半で中国政府の産業政策を整理した上で,中国ゲーム産業の発展の歴史を振り返る。後半では,定性的アプローチを用いながら,日本からみた中国ゲーム産業のグローバル競争力の形成要因についてマクロ,メゾ,ミクロの3つのレベルから考察する。そして最後に今後の展望について述べる。

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