マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
最新号
ウェルビーイングとマーケティング
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
  • 日高 優一郎
    2026 年46 巻2 号 p. 105-107
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
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    This special issue focuses on the relationship between well-being and marketing. While marketing is often assumed to play a constructive role in enhancing human well-being, how marketing activities actually affect well-being is far from evident. Depending on how marketing is designed and enacted, it may contribute to the improvement of well-being, but may also undermine it. This inherent ambivalence has generated growing theoretical and empirical interest in the relationship between well-being and marketing. In marketing research, well-being has been conceptualized as a broader construct encompassing life satisfaction, subjective happiness, and social welfare. Recent studies have increasingly attempted to integrate consumption-related well-being with general well-being, thereby extending the scope of marketing inquiry beyond narrow performance outcomes. Importantly, this research stream does more than extend the application domain of existing marketing theories. By incorporating well-being as a central concern, it invites not only further theoretical refinement in relation to well-being, but also re-examination of the implicit values and evaluative frameworks that have long underpinned marketing theory. The aim of this special issue is to stimulate such theoretical reflection and to advance scholarship that more carefully addresses the role of marketing in shaping human well-being.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― 乳児用液体ミルクの日本市場導入 ―
    水越 康介, ケネディー アン-メリー
    2026 年46 巻2 号 p. 108-116
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2026/02/14
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    電子付録

    本研究は,乳児用液体ミルクの日本市場導入プロセスの分析を通じて,マクロソーシャルマーケティング(MSM)理論の発展を目指す。MSMは,多くの社会問題を複雑性を持つ厄介な問題として捉え,協働による社会システムの変革の必要性を強調する。しかしながら,具体的な介入策はシステム思考において断片的に提示されるにとどまっている。本研究は,レバレッジポイントの一つであるパラダイムシフトに焦点を当てる。母乳が最善であるとする日常のパラダイムが震災下に相対化されることで関係者間の協働が可能となるとともに,マーケティング・システムと結びつけられることで液体ミルクの導入が促進された。本研究は,ソーシャルグッドが競合しうる世界における政府と市場の役割を明らかにしている。

  • ― 日米消費者の比較分析 ―
    西尾 チヅル, 石田 実
    2026 年46 巻2 号 p. 117-127
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2026/03/12
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    地球環境問題の深刻化に伴い,消費者のライフスタイルを環境配慮型に転換させることが急務となっている。しかし,エコプロダクトの選択,リユース,シェアリング等の日本の消費者の実践度は低水準であり,その受容性を高めることが求められている。本研究では,著者らが開発したサステナビリティ価値観尺度を用いて日米国際比較調査を実施し,消費者のエコロジー行動の背後にある価値観とさまざまなエコロジー行動実践度との関係における日米間の相違を明らかにする。特に先行研究で議論となっている,シェアリング行動はエコロジー価値観によって動機づけられているのか,それともマテリアリズムによるかについて検証する。分析の結果,サステナビリティ価値観は日米間で等価であること,どのタイプの行動も米国消費者の実践度の方が有意に高いこと,シェアリング行動は,日米ともに,エコロジー価値観よりもマテリアリズムに動機づけられていることが明らかになった。

  • ― Bコープ・ムーブメントと非営利組織のマーケティングの示唆 ―
    芳賀 康浩
    2026 年46 巻2 号 p. 128-137
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2026/02/13
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    ほとんどの大企業が積極的にSDGsに取り組んでいるにもかかわらず,持続可能性の問題には改善の兆しが見られない。その原因として従来の環境政策の基本的な考え方である効率性アプローチの限界が指摘され,エネルギー・資源の総消費量そのものを抑制する「充足性アプローチ」へのシフトの必要性が指摘されている。また,消費回避的な充足的消費も一部の消費者に見られるようになっている。こうした環境政策や消費の変化にマーケティングも適応する必要がある。本稿では,まず充足性アプローチに大企業が適応することが困難であることを確認する。そして,充足性アプローチを主導することが期待されるBコープの考察から「利益ためのCSR」か「CSRのための利益」かという二者択一が問題であることを指摘する。そして最後に,「CSRのための利益」を前提とする非営利組織のマーケティングの特徴を検討することで,企業のマーケティングはこの二者択一から脱することと,売上以外の収益獲得のためのマーケティングによって充足性アプローチへの移行が可能であることを主張する。

  • ― 日本における検証 ―
    松原 優, 木川 大輔
    2026 年46 巻2 号 p. 138-148
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
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    電子付録

    本研究ではブランド研究における「消費関連ウェルビーイング」と「一般的ウェルビーイング」に着目し,この2つのウェルビーイングを中心する先行要因/結果要因に関する包括的なモデルを日本の文脈で検証することを目的とする。6種類のウェルビーイング,8種類の先行要因,6種類の結果要因を含む包括的なモデルを検証した結果,おおむね先行研究と一致する結果が得られた。さらに,サービスブランドと製品ブランドの間にモデルの異質性が存在するかを検証し,本研究において提示されたモデルが両者である程度一定の構造を持つことが示唆された。本研究によって,過去の研究によって蓄積されてきたブランドに関する消費者のウェルビーイングを取り巻く心理的なプロセスが統合され,明確化された。また本研究はブランドマネージャーが自社の顧客のウェルビーイングを考慮したマーケティング施策を実施する際のロードマップを,ブランドの視点から提示した。

受賞論文 / 招待査読論文
  • ― 日本の上場企業の正規従業員を対象とした調査に基づく実証 ―
    加藤 拓巳, 池田 亮介, 小泉 昌紀
    2026 年46 巻2 号 p. 149-158
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/06/12
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    インターナルマーケティング(IM)は,従業員を顧客として捉え,社内施策に焦点が置かれる。しかし,消費者向け広告は,従業員が仕事の社会的影響を認識したり,意識改革の機会となる。ビジネスではこのような活動が見られるが,研究としては知見が乏しい。本研究は,IMの文献で議論されてきた9つの要因(能力獲得,賃金,ワークライフバランス,上司との信頼関係,人材の多様性,オフィス設備,社員食堂,先端技術,パーパス)に加えて,本研究の仮説である広告を含めた10要因を対象とし,満足と転職意向への影響を明らかにした。日本における10業界(自動車,電機,医療機器,食料品,不動産,IT,金融,小売,サービス,行政)の正規従業員5,000人を対象にオンライン調査を実施し,共分散構造分析を適用した。その結果,広告は満足には効果が検出されず,転職意向で有意な正の効果が見られた。さらに,企業としては規模の小さい組織,従業員属性としては若い世代ほど,転職意向が高まりやすいと確認された。この結果は,広告を通じた社内コミュニケーションを図る際,転職意向が高まらないよう配慮が必要であると警鐘を鳴らしている。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • ― 従業員主導型イノベーション研究と企業内リードユーザー研究の架橋 ―
    米満 良平
    2026 年46 巻2 号 p. 159-168
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2026/03/10
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    先行研究では,研究開発職ではない一般従業員が,ユーザーとしての知識を活用することでイノベーションに関わることが多く報告されている。この現象は,非研究開発組織の一般従業員がイノベーションに関わるイノベーション研究と,ユーザーがイノベーションの源泉となるユーザー・イノベーション研究の二つから捉えることができる。それぞれで注目される重要な現象であるが,これまで双方を架橋し,体系立てたレビューは少ない。本稿の目的は,一般従業員でもあるユーザーが生み出すイノベーションに関する二つの研究の潮流を概観するとともに,システマティックレビューを行い,整理することである。レビューの結果,イノベーションに関わるユーザーの個人特性,イノベーションへの参加プロセス,イノベーションの効果の三点から整理を行った。特に,参加プロセスについては,日常的な「軽い」参加と,非日常的な「重い」参加に類型化した。一方で,マーケティング研究としても重要であり,分野が比較的新しい企業内リードユーザー研究の視点からは,残された課題も存在する。そのため,今後の研究の方向性を示唆することで本分野に貢献する。

  • ― 観光研究における文献レビュー ―
    張 雪瑩, 寺﨑 新一郎
    2026 年46 巻2 号 p. 169-176
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/11/08
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    電子付録

    本稿は,「真正性の高い観光経験が,旅行者の自己変革を促す」という命題に基づき,観光における真正性体験がいかにして変革経験として構造化されるかについて先行研究をもとに検討するものである。2000年以降に英語圏で発表された17本の先行研究を対象に,真正性と変革経験の関係性を,①関係的実践,②否定的経験,③未来志向,④時間性と反復性という4つの視点から整理・再構成した。分析の結果,真正性は固定的な「本物らしさ」の知覚に加えて,身体的・感情的関与,他者との関係,幻想や信仰,記憶やナラティブといった動的・関係的実践の中で生成される経験であり,その過程において自己と世界の境界が再編され,存在論的問いへの内省が促されることが示された。本稿は,真正性を変革経験の構造的条件として整理し,観光研究における真正性概念の再定位を試みた点で意義がある。また,観光の実践においても,表層的な演出ではなく,旅行者の内的変化を支えるようなナラティブや関係性の設計が求められる。

投稿査読論文
  • ― 改善・提案制度のGTA分析 ―
    米満 良平
    2026 年46 巻2 号 p. 177-186
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2026/01/22
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    近年の研究では,ユーザー・イノベーションは企業内でも起こることが明らかになっている。組織の従業員が,商業的に魅力あるイノベーションに貢献するリードユーザーである可能性があることから,より効率的な探索と共創の実現が期待されている。一方で,従業員が自身のイノベーションを公にしないことを指す「アンダーグラウンド・イノベーション」という現象も指摘されている。本研究では,改善・提案制度を採用する企業に対しインタビュー調査を実施し,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い分析を行った。その結果,日常的な業務行動である改善活動から従業員のユーザー・イノベーションが創出されること,その創出には改善・提案制度のマネジメントが影響していることを確認した。具体的には,日常的改善への参加を促し,改善の数を増やす「量」と,改善をユーザー・イノベーションへと向上させる「質」のマネジメントが機能していた。同制度は,意図せざるユーザー・イノベーションの創出につながるプロセスであるとともに,従来のプロジェクト型とは異なる日常的な業務行動から企業内リードユーザーを探索する手法としても有効である可能性が示唆された。

  • ― 日本市場での代替肉を対象としたエシカル消費の推進 ―
    加藤 拓巳, 松田 敦樹, 伊熊 結以, 小泉 昌紀
    2026 年46 巻2 号 p. 187-198
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/12/06
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    エシカル消費の要因としては,社会や他者への利益を強調する利他的動機より,消費者の個人的な利益を強調する利己的動機の方が大きな影響があると認識されている。食品の場合,環境配慮や動物福祉という利他的動機より,健康という利己的動機の訴求が重視されてきた。温室効果ガス排出量を削減できる代替肉においても,既存文献は健康面に議論が集中している。そこで本研究は,日本における代替肉市場を対象に,2つのランダム化比較試験により,双方の動機の学術知見を拡張した。Study 1では,低カロリー・低脂肪という商品特徴を踏まえて,満腹感に訴えかける商品コンセプトを提案し,それが健康のコンセプトよりも高い魅力があることを実証した。これによって,健康に依存してきた利己的動機に,新たな知見が補完された。Study 2では,利他的動機の価値の抽象性を克服するため,自身の商品購入数に応じて植樹の本数を可視化するスマートフォンアプリケーションにより,自己効力感を刺激する消費者経験を生み出すことで,その魅力を高められることを示した。その効果は,エシカル消費に関心の高い傾向にある,女性と若年層–中年層で顕著になった。

  • ― 顧客の参加の媒介的影響に着目して ―
    下坂 光
    2026 年46 巻2 号 p. 199-208
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    [早期公開] 公開日: 2025/12/09
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    電子付録

    サービスは,価値を生み出すプロセスであり顧客はその生産に参加する。この「顧客の参加」は,その参加プロセスが構造的である場合に効率的に遂行される。しかし,オンライン学習の顧客の参加プロセスは,構造化されておらず複雑である。従って,オンライン学習では,その参加プロセスに適応するための自己調整学習が学生に求められる。さらに,他の学生の援助行動がその自己調整学習に影響する。一方で,学生の自己調整学習がサービスの生産と評価に与える影響や,他の学生の援助行動と学生の自己調整学習の関係は先行研究では明らかになっていない。そこで本研究は,顧客の参加の媒介的影響に着目し,オンライン学習における学生の自己調整学習が学生の知覚サービス品質にどのように影響するのか,そして他の学生の援助行動がその自己調整学習にどのような影響を及ぼすのかを,実証分析を通して確認する。分析の結果,学生の自己調整学習は,知覚サービス品質に対しネガティブな直接効果を持つものの,顧客の参加を媒介することでその影響はポジティブになる。さらに,他の学生の援助行動が学生の自己調整学習を促進することが示された。最後に,本研究の貢献を議論する。

マーケティングケース
  • ― andu ametのケース ―
    西岡 健一, 嚴樫 晴南, 南 知惠子
    2026 年46 巻2 号 p. 209-219
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
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    企業は利潤の追求だけでなく,その活動により社会的課題を解決することが求められている。企業の持続可能性とは,社会および環境への配慮を重視し,経済的な目標と社会的な目標とを遂行することである。しかしその実行には,企業は互いに矛盾する可能性のある複数の要求に対処する必要がある。この相矛盾する目標遂行という問題はパラドクス問題として長年経営学で捉えられており,マーケティング視点からの研究蓄積がある。しかし現実には社会貢献活動を一過性の宣伝として扱う傾向が強く,企業の事業運営の中に社会的価値を深く根付かせられないという現状がある。本稿で取り上げるレザーグッズ・ブランド,andu amet社は,原材料の調達から縫製までのすべてをエチオピアで行い,社会的大義を大きく訴求するのではなく,製品の持つ価値を訴求することで社会的価値と経済合理性を両立させるビジネスモデルを作り上げた。本稿ではこの両立を可能にする要件や実践力を確認するとともに,今後のビジネスモデルの拡張性について述べる。

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