抄録
本稿の目的は,コロナ禍で立ち上がったインバウンド観光業界オンライン・コミュニティの活動がメンバーに対してソーシャル・キャピタル(SC)をもたらしたのか,それらは個々のメンバーのビジネスにおけるレジリエンスにつながったのかを検討することである。質問紙調査から得られたデータを分析した結果,全回答者の約3割が活動をとおしてSCを形成し,レジリエンスにつながった実感を持っていた。危機が観光業界内で業種と規模を横断する越境的ネットワークを生み,そこに積極的に参加した人びとがSCを形成しレジリエンスを駆動したことを示した本研究は,SCが危機対応に役立つという先行研究の知見に加えて,逆に危機がSCを生みレジリエンスを駆動する可能性を示した。