日本マーケティング学会の強みを一言で言うならば,それは「自由闊達さ」ではないか。マーケティングに関係することならば,どのようなテーマをどのような方法論で扱うことも許されているのが本学会の大きな特徴と言える。本「マーケティングレビュー」第2巻第1号を刊行するにあたって,集まった受賞論文を眺め渡し,あらためて学会のこの特徴を思わないではいられなかった。
今号に集まった研究テーマは以下のようである。プロ野球チーム別のファンのロイヤルティ分析,幸福感を測定する尺度開発,SNSユーザーの影響力,都市ブランドの意味構造,デザイン研究者の経営参画,価値共創を行うサービス提供者の行動,など。
これらの研究テーマを眺めただけでも,マーケティング論の学問としての幅広さ,深さ,さらには可能性を感じないわけにはいかない。むろんこうしたテーマの幅広さが,マーケティング論の研究フィールドを曖昧にし,何を扱う学問分野なのかを不明確にしている,と言えないわけではない。ただし,マーケティング研究の歴史はまだ新しいうえに,研究対象たる現実の経済社会は常に変化し動いている。こうした良い意味での混沌の中から,新しいマーケティング論研究の領野が拓かれていくと私は考える。
今回もまた,シニアエディターの方々に大きな労力をかけて,査読を行っていただいたことに感謝申し上げる。引き続き学会員からの積極的な論文執筆と研究発表への参加を呼び掛けたい。