マーケティングレビュー
Online ISSN : 2435-0443
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査読論文
  • ― 行動の乖離メカニズムとエシカル要因を価値に転換するコンセプトの検討 ―
    加藤 拓巳, 潮崎 真惟子, 伊熊 結以, 池田 亮介, 小泉 昌紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    消費者はエシカル商品の積極的な採用を表明しながら,実際にその行動をすることは稀である。態度−行動の乖離の理由は,調査では社会的望ましさバイアスによって肯定的な態度,実環境では便益の曖昧さによって否定的な行動を引き起こしていることが考えられる。この乖離を解消するために,商品の主要要因を網羅して評価する必要があるが,既存文献はエシカル要因のみに限定している。本研究は,日本のコーヒー市場を対象とした2つの調査によりこの知見を補完する。Study 1は,ロイヤルティ要因を共分散構造分析で検証した結果,ブランド,商品品質,販売チャネルは正の効果だが,エシカル要因のみ負の効果が検出された。つまり,調査でも社会的望ましさバイアスを受けない回答を得られている。ただし,この結果は社会問題解決を訴える市場のエシカルコーヒーが対象である。そこで,エシカル要因を価値として認識されるための実証を行った。Study 2は,ランダム化比較試験により,貧困問題を訴求するよりも,農園の労働条件の良さがもたらす品質を訴求するコンセプトの方が魅力が高まることを示した。

  • 高橋 友輔
    2024 年 5 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    本論文の目的は,Kohli and Jaworski(1990)に代表される,組織の市場志向性を行動的側面から捉える研究を起点とし,日本企業における組織の構造的特性が市場志向行動に与える影響を明らかにすることである。本論では特に,マーケティング戦略のマネジメントに深く関係する,マーケティング意思決定の影響力の集権性,戦略作成の公式化,部門間のタスク・コンフリクトに関して,市場志向行動に影響を与える先行要因として着目する。市場志向行動のプロセスを,市場情報の生成と普及,反応とに細分化した上で,それらと先行要因の組み合わせがどのように影響を及ぼし合うのか,日本の製造業におけるマーケティング担当者に対するサーベイ調査を基に,構造方程式モデリングによる実証的解明を試みた。結果として,①市場志向行動プロセスは,シームレスなプロセスとしては成り立っていないこと,②市場志向行動全ての要素を向上させる最適な組織構造の設計は困難であり,状況に応じた組織構造の調整が必要であることが明らかとなった。

  • ― 香り要素とエシカル要素の効果の比較 ―
    蛯谷 孟弘, 加藤 拓巳
    2024 年 5 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    近年,商品機能を過剰に表現した「過剰広告」が散見される。それら過剰広告が消費者の知覚に及ぼす影響については,これまで盛んに議論されてきた。既存研究の多くは過剰広告の負の影響について論じたものだが,以下2つの条件では正の影響を及ぼす;(1)消費者がブランドに好意的な態度を有する,(2)過剰さを受容しやすい国民性を有する。しかし,これら既存研究は消費者の態度や属性に依拠しており,消費者に魅力的に映る過剰広告の要素についての議論は乏しい。そこで本研究は柔軟剤広告を対象に,過剰な要素として香り(私益)とエシカルさ(公益)を挙げ,各要素を過剰に訴求した場合の広告の魅力について,以下2つの仮説を導出した。H1:柔軟剤広告の香り要素(私益)の表現は,過剰と知覚された場合,広告の魅力に負の影響を与える。H2:柔軟剤広告の過剰なエシカル要素(公益)の表現は,過剰と知覚された場合,広告の魅力に正の影響を与える。ランダム化比較試験の結果,2つの仮説は支持された。よって,消費者の知覚する広告の魅力を高めるために過剰広告の公益要素は効果的であり,企業は積極的に消費者に訴求すべきである。

  • ― 日本のマンガアプリの分析 ―
    榎澤 祐一
    2024 年 5 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    基本利用料が無料のフリーミアムのプラットフォームでは,事業者が広告費用を負担せずにユーザー獲得できる利点があるとされる。しかし,日本の事業者は一般的に高額な費用を要するとされるテレビ広告を出稿することが多い。そこでフリーミアムのサービスにおける広告効果の実証を試みた。具体的にはフリーミアムのマンガアプリ2社の2時点でのテレビ広告視聴数と会員状況に関するシングルソースデータを基に,テレビ広告が無料会員か非会員のマンガ購買に与える影響を分析した。その結果,有料購買者に転換した週に視聴したテレビ広告の視聴回数と,その1~2週間前に視聴したテレビ広告の視聴回数との交互作用が購買に正の影響を与えていた。この結果は,ネットワーク効果が期待できるフリーミアムのプラットフォームであっても広告効果が認められ,ネットワーク効果と広告理論を統合したマーケティング戦略の理論構築の可能性と必要性を示唆するものである。

  • 木村 慎之介, 長尾 雅信, 八木 敏昭
    2024 年 5 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    近年,ソフトパワー向上による災害に強い地域社会の構築が課題となっている。そこで本研究ではプレイス・ブランディングの知見を援用し,これまで地域防災の文脈で論じられてきたソーシャル・キャピタル(SC)だけでなく,プレイス・アタッチメント(PA)および自然資産も含め,潜在的復興力を基準変数とする包括的なモデルを提示した。分析に関しては,まず探索的因子分析により潜在的復興力の構成要素を抽出した後に,確証的因子分析により各変数の信頼性・妥当性を検討した。その後,共分散構造分析により仮説モデルを検証した。その結果,SCとPAは潜在的復興力に直接的な影響を及ぼし,SCはPAを介して潜在的復興力に影響を与えるという間接的な効果も一部認められた。また,自然資産はSCおよびPAを醸成し,潜在的復興力を間接的に醸成することが示された。結論として,自然資産を活用した人々の交流が,地域住民と地域空間の結びつきを育むことで総合的に潜在的復興力を醸成する可能性が示唆された。さらに市部・郡部別の多母集団パス解析からは,一部パラメータに地域差が存在することが示唆された。

  • ― 宿泊予約サイトのユーザーレビューを用いた実証分析 ―
    犬塚 篤
    2024 年 5 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    宿泊施設におけるサービス品質評価の不均一性が,利用客の総合評価にどのように影響しているかについて,大手宿泊予約サイト「楽天トラベル」のユーザーレビュー(7,210施設,576,449レビュー)を用いた検証を行った。その結果,多くのサービス機能において,品質評価の不均一性が大きい宿泊施設では,利用客の総合評価が低くなる傾向があることが示された。またその傾向は,レジャー利用客の方がビジネス利用客よりも顕著であることが明らかになった。さらに,上記で対象とした宿泊施設の支配人に対する追加調査を行ったところ,施設内における統合的品質管理(TQM)の実践によって,サービス品質評価の不均一性を低減させられる可能性があることを見出した。

  • ― 食料品企業の顧客データを用いた実証研究 ―
    髙橋 広行
    2024 年 5 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    本研究は,モバイル・アプリ・エンゲージメントに関する研究である。近年,エンゲージメントに関する研究は研究面でも実務面でも注目されている。本研究はモバイル・アプリ・エンゲージメントに影響する要因とロイヤルティを測定し,実際の購買行動データを突合した包括モデルによって,構造的な関係性を明らかにする。調査は,食料品企業のモバイル・アプリの会員に対して行った。分析の結果,モバイル・アプリのデザイン性(特に使い勝手の良さ)がエンゲージメントを高め,エンゲージメントがアプリの態度的ロイヤルティ(主に他者への推奨意図)と行動的ロイヤルティに影響を与え,購買行動にも正の影響を与えていた。特に,モバイル・アプリ・エンゲージメントは,態度的ロイヤルティよりも実際の購買行動にも強い影響を及ぼしていることが明らかになった。

  • ― 深層インタビューとグラウンデッド理論を中心に ―
    李 珠伊
    2024 年 5 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    [早期公開] 公開日: 2024/02/05
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    本研究は,高齢化社会と医学の進展により寿命が延びる現代社会で,健康に対する若い世代の関心が高まっている中で,健康志向の高いミレニアル世代が老後に対する健康認識と健康関連行動及び消費行動をどのように捉えているかを明らかにし,健康関連行動に影響を与える要因を探求することを目的としている。グラウンデッド理論を用い,持病を抱えるミレニアル世代を対象に深層インタビューを実施し,健康認識,健康関連行動,消費行動についてモデルを導き出した。本研究の成果から,これまでにない長期的な健康認識と健康関連行動及び消費行動のリスク認知に基づく分析が可能となった。この研究は,若い世代の将来の健康関連行動及び消費行動に対して学術的な示唆を提供し,政府機関や業界企業の実務活動にも寄与することが期待される。

編集後記
エラータ
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