2017 年 30 巻 8 号 p. 481-498
22世紀の末葉に日本語の文章から漢字が無くなるという予測がある.この予測は文章に占める漢字の割合の通時的な調査に基づき,20世紀の中葉に示されたものであるが,それから約半世紀を経た今,文章に占める漢字の割合が減り続けているかは疑問である.本稿ではこれまでの調査を概観すると共に実際に調査を実施して文章に占める漢字の割合を明らかにし,そこに見られる傾向について分析を試みた.その結果,20世紀の末葉以降について漢字の割合が大きく変動しているとは言えず,漢字が無くなるという予測の前提となっている漢字の割合が減り続けるという傾向は裏づけられなかった.また,漢字の割合が安定しつつある可能性が改めて示された.