2017 年 31 巻 1 号 p. 20-35
新聞は,記者が一般大衆に情報を伝達するために,簡潔でわかりやすい表現を目指して,標準的な表現で書かれている.そのため,日本語母語話者の言語産出を反映しているのではないかと思われる.特に,音象徴語は,幼少から擬音や擬態の感覚が養われて,共感的な意味拡張とともに,多様な表現へと拡張した表現であるため,成人の日本語母語話者では多様な動詞とともに産出されると仮定される.そこで,28種類の音象徴語と動詞の共起パターンを,1991年から1999年までの9年間の毎日新聞のコーパスとこれらの音象徴語に対する36名の母語話者による30秒での動詞の産出を比較した.その結果,多様性の指標であるエントロピーは,母語話者と新聞コーパスで高い相関(r=0.83,p<.001)を示した.エントロピーと規則性の指標である冗長度には有意な違いはなく,両者の類似性が示された.記述的な考察でみられた例外的な音象徴語は28語中4語であった.